「…っ…え、ここ…どこ?」
目を覚ますと、私は赤い髪の男の膝に寝かされていた。
先程の呟きで気付いたのか目線がこちらに向く。
「やっと起きたか?お姉さん?」
その声を聞いて少し目を見開いた。
何度もアニメで聞いたことのあった、金髪のぐるぐる眉毛と同じ声優の彼。
「えと、お名前は…?」
「俺?悟浄っていうんよ」
つまり…ここは、最遊記のセカイ?
まさか…そんなことがあるのだろうか、いやないだろう。
おそらくこれは夢なんだ。
リアルすぎる夢なんだ。
死んだ後の幸せな夢を見ているんだ。
そうに違いない。
そう考えて悟浄を見つめていると
「お前、空から降ってきたんだぞ!何があったんだ?」
隣から聞こえる聞いたことのある元気な声。
目線だけ移動させて見れば漫画で見た姿と同じ…って、空から?
「い、今…空から降ってきたって言いました?」
思わず状態を起こすと目眩がしてポスリと悟浄の足に頭が再びのっかった。
頭に触れれば包帯が巻かれており触るとつきんと痛みが走る。
「すみません、きちんと受け止められなくて。少し頭から血が出てしまいました。」
そう言って近寄ってきたのは裏のボスと呼ばれる彼。
おかしい、痛覚がある…これは、夢じゃない?
「てめぇは何者だ。足手まといなら要られねぇぞ」
ガチャリという音と共に銃を額に押し付けられた。光によってキラキラと髪の毛が輝いていて一瞬だけ神様に見えた無愛想な顔をした彼。
久々に綺麗だと心からそう思えた。
悟浄の赤い髪も綺麗だったが、それよりも綺麗で思わず見いってしまう。
「お姉さんを観世音菩薩が連れてけーってさ。だからこいつご立腹なんよ」
悟浄が苦笑いを浮かべてそういった。
「観世音菩薩…え、まって下さい?!その観世音菩薩ってどこにいるのですか?!」
「どこってここにいんじゃねえか」
そう声がしてそちらに頭を向けばあのスケスケな布の服の女性がにかっと笑っていた。
「あの…」
聞きたいことはたくさんあった。
まず何を聞こうかと考えているとわしゃわしゃと頭を撫でられた。
その温かい手の感触に心のなかがポカポカと温かくなっていく気がして目を閉じた。
16年生きた人生で撫でられたことなどあっただろうか、そう思うくらい久々の感覚だった。
「お前の力はあっちにいったら危ねぇんだとよ。俺はどんな力だか知らねぇけどよ。いざってときはなんかしてやっからこいつらと自由に旅をしろな」
暖かさが心に染みていたときにそう言われた。
思わず閉じていた目を開けると美しい笑顔。菩薩なだけはある、そんな笑みを浮かべていた。
私は頷くと勢いよく観世音菩薩に抱き付いたのだった。

▼三蔵一行と観世音菩薩

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