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「………………さむっ」 夏島が似合う男、ドフラミンゴは冬島にクルー達も引き連れてやって来た。 「珍しい…いつもは仕事に一人で行くのに」 真奈美は練習に明け暮れていたため何故ここに来たか知らなかった。おそらくクルー達もだろう。 当の本人は直ぐに船を下りると真奈美にも構わずスタスタと行ってしまった。 仕方がなく森に行き練習を重ねていた。
正直な話、雪は久しぶりに見て思わず寝そべった。 ドフラミンゴがほとんど冬島に行かなかったのが一つの要因である。 「…あっちの世界は今、冬かなぁ」 お義父さん…雪好きだったよな… 思い出すと胸が痛む。 ごめんなさい…思い出すたびに繰り返した言葉が喉に引っかかり苦しい。 目頭が熱くなってきた。 そう感じたとたんこぼれ落ちた涙。 私はしばらく泣いていた。
「お前が朱眼屋か?」 突然、顔に陰ができたと思ったら声をかけられた。 誰だろうか… 隈の酷い男は口角を上げ見下ろしている。 …あれ? 「ドフラミンゴといた?」 ドフラミンゴと同じ匂いがして思わず尋ねる。 するとより笑みを深くして隣に座ってきた。 「俺はトラファルガー・ローだ。あんたは」 「真奈美。ドフラミンゴと仕事してたの?」 寂しかったのも今日でお終いかもしれない そう思うと嬉しくなった。 が、違うらしく首を横に振られた。 「トラファルガー…あのね、私ほめられたくて能力極めようって頑張ってるのに、ドフラミンゴは無関心でさ…」 「知るか。」 ごもっともな一言を言われた。 いきなり相談はないか… それにしてもトラファルガーは何者だろうか。 ドフラミンゴの知り合いだからおそらく海賊だろう。 「医者でもある。」 「え?」 まさかの心が読めるの? 驚いて目を見開く。 「………声に出てた」 「あ。そうでしたか」 お恥ずかしい。そう言ってしばし笑っていた。
てか…海賊兼医者って両極端な気がする。 口には出さないけど… 「そういえば私に何のよう?」 隣に座っている男に尋ねる。 が、反応が無い。 チラッと見ると目を閉じていた。 「…寝てるの?」 声を再びかけるが反応しない。 風邪引くよね… もう夕方頃で肌寒い時間帯だ。 私はトラファルガーをおぶってとりあえず船に向かった。
さて、どうするか。 とりあえず私のベッドに寝かせた。 ドフラミンゴはまだ帰っておらず相談もできない。 「………ドフラミンゴ」 寂しくて呟く。 室内はもう薄暗くあの日のように感じた。
あの日は今みたいに雪の降る夕方頃だった。 薄暗く視界があまり良いとは思えない状態でただ闇雲に走っていた。 目が薬で見えにくく銃も弾切れで絶体絶命。 ヤバいと思った瞬間発砲された。 死ぬかと思ったのに痛みすらない。 後ろを振り返ると お義父さんがいた。 『自慢、の娘…だっ、た…真奈美、幸、せ…に…』 そう言うと息絶えた。
思い出すたびに涙が溢れる。 「お前、大丈夫か?」 「っ…?!」 顔を上げると目の前にトラファルガーがいた。 私は思わず抱きつきむせび泣いた。 ドフラミンゴにすら見せたことの無い姿を見られたけど、どうでもいい。 今はただ泣きたいんだ。 私は気が済むまで泣いていた。
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