先程から携帯を開けたり閉めたりを繰り返している。
遅い…
いつも以上に遅い彼をイライラしながら待つ。
彼のせいでイライラが絶えることがない。
毎回そうだった。
遅刻してくるし、女といちゃつく。
正直別れたい。
親の決めた許嫁なんてもういやだ。
最近彼の為に笑ったのはいつだった?
それすら曖昧になっている。
帰ろうか…
携帯を閉じて待ち合わせ場所から離れていく。
携帯は電源を落としてバックにしまった。
そう言えば近くにカフェがあったよな…
いつも彼中心に世界は動いていて甘いの苦手な彼だから連れて行ってくれなかった。
カランッ
ドアについた鐘が軽やかに鳴った。
店内は甘い匂いで一杯になっていて思わず顔が綻んだ。
案内された席に座ると隣には赤い髪の不良のような人がいた。
余りにも似合わず笑いそうになったがこちらを見られたときにとても怖そうな顔だったのを思い出してこらえた。
何にしようか…
「え……」
初めてきたからメニューが読めない。いや、読めたらすごいと思う。
『くまさんのダンス』とか『お花畑のウサギ』とか何ですか?
思わず口にでてしまった。
すると隣の赤い人がこちらを見て丁寧に教えてくれた。
見た目とは裏腹に優しいらしい。
私は『ヒツジの洋服』というメニューを頼んだ。
彼曰くクレープらしい。
「常連なんですか?」
顔怖いし知らない人だけれど尋ねてみた。
するとうなずかれた。
まあ知らない人に聞かれたらそうなるか。
「俺が怖くねえのか?」
突然の質問に少し驚く。
が、微笑んで
「可愛い物食べてるのに怖いですか?」
そう言い返すとばつが悪そうな顔をされて思わず笑った。
「おい…」
「あはは…久しぶりに笑ったなぁ」
久しぶり過ぎて涙がこぼれてきた。
「おい…大丈夫か?」
「…うん。」
心配そうに見てくる赤い人に泣きながらも笑ってみせる。
「ねえ、名前なんていうの?」
そう聞いたと同時に可愛らしいクレープが来た。
思わず携帯を取りだそうとしたが止めておく。
「キッドだ」
「かっこいい名前だね。」
正直な感想を言えばキッドは頬をほのかに赤くさせ目を泳がせた。…可愛い。
「お前は?」
「え?あ、私は「真奈美。」……真奈美」
名前をいわれてそちらを見れば彼がいた。
「…ロー。」
声に出した名前に思わずイラつく。
「なにしてんだよ。」
明らかに不機嫌そうな声に更にイラつく。
「…キッド。連絡先教えてくれる?」
私はローを無視してキッドに話しかける。
キッドは固まっていたが店のコースターに電話番号を書いてくれた。
「ありがとう。」
そう言って机のクレープを数口食べて店を出た。
また来たい。…無理だと思うけど。
後ろからドアが開く音がして思わず走り出した。電車に乗ったことがないからタクシーを拾った。
ピンポーン
向かった先は知り合いの家。
「あれ?真奈美どうしたん?」
「シャチ…」
いやな奴が部屋から出てきた。が、私は部屋にあがる。
「真奈美?」
「ペンギン…私もうイヤだ」
そう呟いて泣き出した。
手に持っていたコースターは握りすぎて形が崩れていた。
…キッド
君が恋人ならどれだけ良かっただろうか…
そしたら毎日笑えただろうか?
そう考えながら泣いて泣いて泣いた。
「ペンギン…なんで私お嬢様として生まれたんだろ…」
私だって恋したいよ?
一人で町に行きたいよ?
ローはなんであんなに自由にしていられるの?違いって何?
「…真奈美」
ペンギンは私の話を聞くと押し黙る。
「真奈美捜したぞ。」
「…っ」
後ろを見るとローがいて、手を合わせているが笑うシャチが後ろにいた。
…ほら、やっぱり。私の周りは敵ばかりなんだ…

鳥篭の鳥

(キッド…)
(君は私の見方ですか?)

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