「...申し訳ないです。血もついてて...」
そう呟くとぐっしょりになった服を乾かす良牙くんが大丈夫だと言いながら右手の怪我の手当てをしてくれる。
「そういえばどうしたんだ?」
その言葉に私は近くにあった木を殴って倒す。
その様子に良牙くんは
「とある喧嘩に巻き込まれて髪の毛をバッサリといきましてね...好きな人のために伸ばしていたんですけど」
そう言うと良牙くんは
「そうだったのか...短いの、似合ってますよ。」
と言った。
単なる慰めだとはわかっているのに、思わずドキッとする。
私は上を見上げると時計の針が見えた。
「もう七時か...帰るね。服、ごめん。さようなら。」
そう言うと私は何か言いかけた良牙くんを背に走り出したのだった。
途中水を被って天道家に帰ると夕飯も食べずにあかねちゃんの部屋に向かった。
「おねーちゃん何?って真奈美?」
あかねちゃんは肩をつかんでガクガクと揺さぶる。
「心配したのよ?どこ行ってたの!」
そう言って涙ぐむあかねちゃんを抱きしめる。
「ごめん。本当ごめん。」
そう言うとあかねちゃんの髪の毛が無いのに気づいてバッとあかねちゃんを剥がしてまじまじと見ると長かった髪の毛が短くなっていた。
「その髪の毛...」
思わず声が震える。
「今日、東風先生のところに行ってきたの。」
その言葉に私は目を見開く。
「・・・でも、東風先生のところにかすみお姉ちゃんがいたの。かすみお姉ちゃんと東風先生、とても楽しそうに話してて、あたしの目から見てもすごくお似合いだった。」
あかねちゃんの言葉に私が顔を歪める。
するとあかねちゃんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑ってこう言った。
「あたし、諦めることにした。」
「...へ?」
思わず間抜けな声を上げてあかねちゃんを見る。
「あたし、わかったの。東風先生には、あたしは恋愛対象に見られてない。かすみお姉ちゃんの妹としか・・・。」
そこまで言うと私はあかねちゃんを抱きしめて頭を撫でる。
「いいから。そんな明るくしなくても。泣いていいから。」
そう言うとあかねちゃんは私に抱きついて泣いた。
その後部屋に戻ろうとあかねちゃんの部屋を出ると乱馬が柱に寄りかかっていた。
「何?」
そう少し睨むと乱馬は目線をそらしながら
「今日は...悪かった。」
そうボソリと言ってきた。
私はそれを聞いて乱馬に近付くとデコピンをした。
「今回は許してやるよ。...あかねちゃんのこと、お前が守れよな。」
そう言って私は自分の部屋に向かったのだった。

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「見えない臓器の名前は」
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