それからしばらく歩くととある場所にたどり着いた。
「ここは?」
そのあかねちゃんの声に私は微笑むと
「ここは瓦屋さんが失敗した瓦を置いておく場所なんだけど、この瓦全部廃棄するらしくってなら割ってもいいかな?って聞いたらオッケーしてくれて。」
そう言うと瓦を数枚積み上げる。
「泣きたい時は泣けばいいし、辛い時は何かに当たったり相談して見るのもいいと思うぞ。」
そう言うとあかねちゃんは瓦と私を交互に見てそれから抱きついてきた。
「真奈美が許嫁なら良かったな。こんなに優しいんだもの。あの馬鹿と大違い...」
そう言いながら涙を流すあかねちゃん。
その小さい身体を抱きしめて私は頭を撫でていた。

「あの場所教えてくれてありがとう。」
少し瓦を割ってから道場に二人で足を進める。
泣いたはずのあかねちゃんの目は腫れておらずホッとする。
「実はあそこ毎朝のトレーニングの時に見つけたんだ。」
そう言って瓦屋のおじさんとの会話を話すとあかねちゃんはクスリと笑ってくれた。
「あかねちゃんは笑ってた方がいいよ。綺麗だ。」
そう笑顔で言うと顔を真っ赤にして小さく
「ありがとう...」
と呟かれた。
道場につくとやはりここでも瓦割りをするらしく準備をする。
しばらくして乱馬が帰ってきた。
「…心配かけてごめんね。」
その言葉に乱馬が出て来られなくなる。
「俺はただ単にあかねちゃんに元気になって欲しいだけだから。」
そう言うと一枚瓦を手に取る。
「俺さ、乱馬は知ってんだけど好きな奴がいるんだ。だけど、そいつは別の奴が好きでよ...同じなんだよ、あかねちゃんと。」
そう言って瓦をリフティングする。
「真奈美が片思いなんて不思議ね。」
「そうか?」
「だって真奈美ほどいい男、見たことないわ。」
「...そっか。」
いい男、か...。好きな相手が女ならいいけど、その相手が男の場合どうなのだろう。
いや、元々私は女だから好きな相手が男なのは普通だけどさ。
こうなるなら女ってバラしとけば良かったかな...。
「で、乱馬、そこで何してんだ?」
物陰に隠れてた乱馬に話しかけるとおずおずと出て来た。
「よ、よぉ…。き、気づいてたのか。」
「普通気づくさ。さっさと出てくればよかったのに。」
「あ、わりぃな...。」
「じゃ、真奈美、乱馬、ちょっと付き合ってよ。」
「へ?」
「パス。」
今、乱馬とあかねちゃんが戦っている。
あかねちゃんは私も誘ったけど即座に辞退した。
そりゃあかねちゃんだしね。
ビッ
あかねちゃんが蹴りを乱馬へと繰り出す。
しかし乱馬はそれを簡単に避けてしまう。
「…ちょっとは打ってきてよ。」
「だーって。」
「本気でやらなきゃ、ストレス解消にならないでしょ!」
あかねちゃんはどんどん乱馬に攻撃を繰り出していく。
「おまえさー、そんなに怒ってばっかで疲れねーか?」
「よけーなお世話よ。」
あかねちゃんの攻撃を全て乱馬は避けてしまう。
「だけどおめー…笑うとかわいいよ。」
「え…」
あかねちゃんの一瞬の隙を狙い乱馬はあかねちゃんの額をトンと押し、勝負はついた。
私はそれを見るとその場を後にする。
多分私より乱馬の言葉の方があかねちゃんに響いたんだろう、なんて考えながら。
その夜乱馬の首がまた傾いていて
「あかねちゃん怒らせたんかよ、学習しろよ馬鹿。」
そう言って首を治したのは言うまでもない。

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