「…かすみさん?」
「…東風先生、かすみお姉ちゃんが、好きなのよ。態度見てたらわかるもん。」
疑問気に聞く乱馬に切なそうに少し笑って答えるあかねちゃん。
それからすごく気まずい雰囲気が流れていると東風先生がやって来た。
「やあ、みんな、何してるんだい?」
「えっ、いや別に、なあっ」
そう乱馬が言うとさらに空気がシーンと静まり返った。
パンッ
するといきなり玄馬さんがどこからか取り出した風船を割った。
何事だと思って皆で見てると、
【パンダがぱんだ。なははんちって。】
と書かれたプラカードを掲げた。
さっきよりもさらに重苦しい雰囲気になってしまった。
...この雰囲気でよく出来るね。
少し玄馬さんを冷めた目で見つめる。
「まあ、とりあえず、部屋に入って。」
苦笑いしながら東風先生はまた私たちを部屋の中に入れた。
「さあ、傷、見せて。」
東風先生は乱馬の傷を見る。
「ボールが当たったの?」
そう乱馬に聞く東風先生にあかねちゃんが反応する。
「はい、まあ。」
ちらっとあかねちゃんの方を見ながら言う乱馬。
あかねはうつむいてしまった。
その様子にカバンの持ち手を握りしめる。
何もできない自分が悔しくて悔しくて情けなくて。
「ほら、動かないで。薬塗るから。」
東風先生は乱馬の顔に薬を塗ろうとしていた。
「ごめんくださあい!」
そこに聞きなれたあの人の声。
かすみさんの声だった。
「かすみさん…。」
ゴキュ
かすみさんの登場に驚いた東風先生は乱馬の首を変な方向に曲げてしまった。
「やあっ、かすみさん!」
乱馬のことなんかお構いなしにかすみさんに挨拶する東風先生。
「今、ものすごい音が…あら、どしたの?乱馬くん。」
乱馬の異変に気づいたかすみさん。
乱馬と一緒に首をかしげている。
「いや、乱馬くんは、最近のお得意様なんです。ね、乱馬くん。」
と、東風先生は玄馬さんを叩きながら言う。
私はそれを見ながらちらりとあかねちゃんを見る。
なんで誰も気づかないのだろう、そう思うくらい目の奥が辛そうで思わず隣に移動し頭を優しくポンポンとあやすように撫でる。
それなのにやはり誰も気づかない。
「あ、これ、お借りしてた本と、あと、これ、お口に合うかわからないんですけど…」
かすみさんは本とお皿に乗ったクッキーを東風先生に渡した。
「これは…、マスクですね。うん、口にピッタリだ。」
クッキーに被せてあった布を口に当てて言う東風先生。
「いえ、そうじゃなくて…。」
さすがのかすみさんも苦笑い。
「おいしい。」
今度はお皿を食べ始めた。
「お皿です、それは。」
そんな東風先生にもニコニコ笑顔なかすみさん。
「せんせえ!!」
すると乱馬が我慢の限界が来たらしく東風先生に向かって叫んだ。
「痛いんですけど。」
そう首を指して言う乱馬。
「また怪我かい?しょーがないなあ。」
「(誰のせいだよ…。)」
「あー、こんなのすぐ治るよ。」
んごきゅ
今度は逆方向に首を曲げられた。
あーあ。
...でも許嫁の癖にあかねちゃんの変化に気づかない馬鹿だから少しくらいいいか、と考える。
「あ、すいません、早乙女さん。かすみさんに出すお茶を。」
東風先生は骸骨に話しかけた。
「そんなことより俺の首を治せってんだ。」
その声にも東風先生は気づかない。
かすみさんもあかねちゃんにこそっと話しかけた。
「東風先生っていつもおもしろい方ね。」
「そお?…おねえちゃんがいないときは違うんだけどな。」
そう、無理やり笑って言うあかねちゃん。
「じゃ、あたし帰るね。」
「俺も用事あるから。」
そう言って二人でさっさとこの場から立ち去る。
「あかねちゃん、少し寄り道しようか?」
そう言ってあかねちゃんの手を取る。
少し驚いた顔をするが抵抗もなくついてきた。

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