―放課後―
「ごめん!乱馬、まだ痛い?」
「怪我、大丈夫か?」
あかねちゃんは乱馬に謝っている。
「まあ、痛いけど。」
でも、乱馬は許してくれてんのかどうかよくわかんない返事を繰り返す。
「ほんと、ごめん!!」
その様子に呆れていると私はパンダに気づいた。
よく見てみると玄馬さんが小乃接骨医院の前で掃除をしていた。
「あらっ。早乙女のおじさま…」
あかねちゃんが声をかけると玄馬さんは私たちに気がついたようでさっと手を上げた。
「やー、乱馬くん、真奈美くん、あかねちゃん。あ、今日からバイトに来てもらってる早乙女さん。知り合い?」
ニコニコしながら話す東風先生。
「その人、乱馬のお父さんです。」
「おやじ…バイトってここだったのか。」
東風先生は、驚きつつも、私たちを中に入れてくれた。
「あれ?乱馬くん、顔どうしたの?」
「体育でちょっと…」
「よく効く塗り薬あげるよ。待ってなさい。」
東風先生はそう言うと、部屋から出ていった。
すると、タイミング悪く電話がかかってくる。
「あっ、すみませーん。早乙女さん、電話とってください。」
東風先生に言われ玄馬さんは電話を取ったがパンダのままなので喋れるわけはなくあかねちゃんに電話を渡した。
…最初から取らなきゃいいのに。
「もしもし、お電話かわりました。…あ…うん、わかった。それじゃ…。」
かすみさんからの電話…か。
一緒に帰るか!一人にしておいてあげるべきか...
あかねちゃんは電話を切ると
「あたし先に帰る。」
と、呟くように言った。
ばっとかばんを持つと出て行こうとする。
私と乱馬はそれを追いかけた。
「うちで、何かあったのか?」
追いついた乱馬はあかねちゃんにそう聞いたが
「別に…。」
とあかねは答えた。
「じゃー、ゆっくりしてけばいーじゃねーか。」
かすみさんが来ることを知らない乱馬はそう発言をする。
「…真奈美。」
あかねちゃんはじっと私を見てきた。
その目の奥は微かに揺れていてそれに気付き私は顔を少しだけ歪めるとあかねちゃんも本の一瞬だけ眉根を寄せて苦しそうな顔をした。
私は乱馬の腕を掴んで乱馬を引き止める。
その間に走って行くあかねちゃん。
「ちょ、真奈美?あ、おい、あかね!」
でも乱馬は去っていくあかねちゃんを呼び止めようとする。
「ちょっと待てよ。おめー、先生が好き…」
「黙れっ!」
乱馬が言いかけたことをやめさせようとつい大声を張り上げてしまった。
「なんだようるせーな。だって、あかねは...」
「…やめて。」
あかねちゃんは再び話し出そうとした乱馬の口を手でふさいだ。
「東風先生、好きな人いるんだからっ。今の電話…。これから、すぐ、来るって。」
静かに切ない叫びのようなあかねちゃんの言葉に乱馬も静かになった。
すると、そこに…
「ごめんください。」
ドアが開いて、誰かが入ってきた。
そちらにあかねちゃんと乱馬が振り向く。
見なくてもわかるからそちらに振り向きはしなかった。
入ってきたのはかすみさんではなく、おばあさんだから。
「この女が…先生の…、し、しぶい。」
よく考えりゃわかるだろうに乱馬は先生の好きな人がこのおばあさんだと勘違いをしているらしい。
本当馬鹿すぎて呆れる。
「「違うに決まってるでしょ!!/だろ。」」
私とあかねちゃんの声がハモる。
私は乱馬にため息をつき、あかねちゃんは呆れた視線を乱馬へと向けた。

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