「あ、そーだ。あかね、学校の帰りに東風先生のとこに寄ってくんない?」
かすみさんが思い出したように言う。
その言葉に私とあかねちゃんはピタと体を止めた。
「借りっぱなしだった本、返してきてほしいんだけど。」
にこっと笑うかすみさんから目を逸らすようにあかねちゃんは少しうつむいた。
「…かすみおねーちゃん、自分で行きなよ。あたし、今日はちょっと。」
そうあかねちゃんは切なそうに呟いた。
「そお?じゃ、しょーがないわね。」
「行けよ、いい口実じゃねーか。」
乱馬がぼそっとあかねちゃんに小声で言う。
空気が読めない乱馬に冷たい目線を送るとあかねちゃんがスッと立ち上がり
「乱馬、真奈美、行くわよ。」
と言って私と乱馬を引っ張って外に連れて行った。

私と乱馬はあかねちゃんに引っ張られたまま走っている。
...浮いているけどあかねちゃんの腕大丈夫かな?
思わずそう考えていると水かけばあさんに水をかけられた。
俺はいいけど、らんまは...
そう考え、声を上げるが私とらんまの声が耳に入っていないあかねちゃんを止める術が分からずそのまま校門にたどり着いたのだった。
「いい?乱馬。あんまり余計なこと…」
あかねがらんまを壁に押し付ける。
「なんだよ?余計なことって。」
「だから、東風先生のこととか。」
そこまであかねちゃんが言ったところでらんまが変身していることに気がついたようだ。
「いつの間に…。」
そうあかねちゃんが呟くと男達が校舎から出てきた。
「今朝は誰からっ!?」
あかねちゃんは構えながら叫ぶ。
「もはや、戦いは挑まん。我々一同、涙を飲んで君と早乙女の婚約を認めることにしたのだ。」
そう泣きながらあかねちゃんに言う男子生徒たち。
「何のこっちゃい。」
そう乱馬が言うと
「つまり、早乙女乱馬がこの九能帯刀を倒したと言うつまらんデマが広がったわけだ。」
どこからか顔に包帯を巻いた九能先輩がやって来た。
いや、確かに倒れていたよな?
「だが、僕は負けは認めん!!」
「九能は風林館高校最強の男だったが、同時に最悪の変態だ。」
九能先輩の言葉はスルーされて男子生徒達が言葉を続ける。
「誰が変態だ!」
その言葉にすぐさま反応し反論する九能先輩。
再び九能先輩の言葉はスルーされ、話を始めた男子生徒たち。
「きみの相手が早乙女なら、まだあきらめがつくというもの…」
男子生徒たちは泣きながらつぶやく。
「あんたも充分変態なのにね。」
その言葉に同意する。
すると九能先輩は
「僕はあきらめんぞ。」
と、顔の包帯をほどきながら言った。
そして全てほどき終わるとふっと笑いながら
「早乙女ごとき腰抜けの蹴り、百や二百くらったところで、痛くもかゆくもないわ。」
九能先輩はかっこつけながら言った。
けれど顔に乱馬がつけた足跡が残っているのでかなり格好悪い。
その九能先輩の言葉にムッとしたらんまはすたっと九能先輩の前に立って
「誰が腰抜けだ、誰が!負け惜しみもたいがいにしやがれ!!」
そう叫んだ。
でも女の姿だってこと忘れていたらしく
「おおおおおおおおおおお!おさげの女ではないかっ!!」
九能先輩がうるさい。
「会いたかった…。」
九能先輩はらんまの手を取り言う。
「おい、ちょっと待て!お前、あかねが好きなんじゃなかったのか!」
「無論どっちも好きだ。」
真顔で答える九能先輩。
女の敵だな。
そう思うと九能先輩を睨む。
「あかねが見てるぜ。」
らんまの言葉に九能先輩はあかねちゃんの方に振り向いたがあかねちゃんはすでに逆方向を見ていた。
「知らなかった…。」
そして演技し始めるあかねちゃん。
「九能先輩。その子が好きなら、私、身を引きます。」
くるっと振り返ってそうきっぱり言った。
「なななななななに言ってんだよっっ!」
あかねちゃんの発言にすごく慌てるらんま。
「て、天道あかね…。」
身を引く身を引く
いじらしいいじらしい
かわいいかわいいかわいい
捨てられない
九能先輩が出した答えは…
「2人とも好きだあ〜っ!」
バキッ
らんまは蹴り、あかねちゃんは殴り、私は背中を蹴ると九能先輩は倒れた。
「じゃ、そーゆーことで」
「早乙女にもよろしく伝えといてくれ。」
そう言って男子生徒たちは去っていった。
私達も九能先輩をその場に残して校舎へと向かったのだった。

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