私はごく普通だと言い張っている警察官だ。
らんま1/2が好きで様々な格闘技の覇者になったのはご愛嬌と言って欲しい。
そんな私はつい一分前にひき逃げにあった。
受身をとったのだが運悪く跳ねた後に下敷きにされた。
警察官のサガなのか知らないがひき逃げをした車のナンバーや車種は既に仲間に連絡をしていた。
多分死ぬ、そう頭で考えているが内心は死にたくないと叫んでいる。
目を閉じれば走馬灯が浮かんできて、やはり好きならんま1/2も出てきた。
死ぬ前にまた読みたかった...
そう考えながら身体が徐々に冷たく動かなくなるのが感じられた。
意識のなくなる直前、同僚の声が聞こえたが私に返事を返すことなど出来なくなっていた。


ドボンッ
水中の中に私は落ちた。
その水は冷たく皮膚に突き刺さる。
ここが死後の世界か...そう思ってうっすら目を開けると同時に呼吸が苦しくもがいた。
光のさす方に一目散に泳いで行くとそここら見えた景色はたくさんの泉のある場所だった。
なんとも言えない寂しさがあるその風景に天国などこんなものか、と思ってとりあえず泉から出る。
それにしても目線がいつもより高いな...
そう思って泉に視線を向けると知らない美男子が映っていた。
他に誰かいるのかと辺りを見回してみるが誰もいない。
もしかして、そう思い泉に映る男を見ながら自分の顔に手を当てるとそいつも同じように手を当てた。
「まさか死後の世界は性別が変わるのか...」
感心してペタペタと自分の身体を触る。
しっかりとした筋肉も付いていておまけに顔もアイドルのように整っていた。
死後の世界っていいな、なんて考えていると人の気配。
思わず振り返るとそこには見たことのある顔。
え...?
その顔はらんま1/2に出てくる泉の管理人のおっさんだった。
「お湯をもらえますか?」
そう即座に言うとおっさんは付いてくるように言ってきた。
私はそれについて行き、お湯をもらった。
バシャリ
頭からお湯をかぶると目線がいつもと同じ高さに戻る。
胸に手を当てると胸もある。
つまり...なるほど。
神は私を見捨てていなかった!
こんな奇跡が起こるなんて!
私は涙を流しながら空を拝むと顔を赤くしているおっさんの案内した小屋を後にする。
そして数分後
「あれ、これからどうしよ。」
小屋から出てきたはいいが荷物が何もないことに気づいたのだった。
何か泉の中に落としてないだろうか...
私はそう考えると泉に引き返す。
私が落ちたのは男溺泉だったらしく内心人外ではなかったことにホッとしていた。
だって知らない土地だし、ね?
パンダとか子ブタとか猫とかアヒルとかになったら、ね...。
それにしてもこんな奇跡あるんだな...らんま1/2の世界に入れるなんて夢にも思わなかった。
そう考えながらスキップでもしそうなくらい軽やかに男溺泉へと向かって行った。

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