「今何か光った?」
何かが光ったような気がして私は後ろを振り返ると清一色がいた。
「捕まえた」
そう言うと私を組敷いた。
「いい眺めですね」
「こっちは最悪だけど」
そう言って自由な片方の手で清一色に殴りかかる。
すると拳が"みぞ"に入った。
しかし効果はないらしく笑顔を絶やさない。
…そうだコイツは死体なんだった!!
それを思い出すと私は逃げるためにもがくが
「流石にここまでだと往生際が悪いですねえ真奈美」
そう言って自由な方の手も括られる。
「そうだ。この際猪悟能の過去について教えて差し上げます」
そう言うと昔話のように話を切り出した。


「そんな人間が仲間にいてそれを貴女は知らされていなかったんです」
語り終わった清一色に私はどうでもいいような顔をする。
「で?近似相愛とか人殺しとか妖怪とかが何?そもそも"似た境遇"だから驚きもしないわよ」
漫画で知っていたし、ね。
「ほぉ、そうでしたか。さらに興味が湧いてきました」
そう言って口を塞がれる。
「ッ?!」
思わず噛みつけば口は離れたが代わりに首を絞められる。
「…人が優しくしてあげようとしたんですけどねェ」
そう言うと音を立てて服を裂かれた。
「ちょ?!動きやすい服これしかないのに!!」
そう嘆くように叫べば
「そこじゃないだろ!」
そう叫び声が聞こえて清一色がふっ飛んだ。
「悟空!?」
思わず抱き付くと悟空は後ろに倒れた。
「何でここ…え?!」
思わず顔をあげるとものすごい真っ赤な顔をした悟空がいた。
なぜ赤くなっているのかわからずにいると胸に何か違和感。
見れば胸に誰かの手。
…なるほど
冷静に今の状況を受け止めて起き上がる。
「そう言えば!悟空が何でここにいるんですか?!」
「水を取りに来てそれからアイツに追いかけられてって!真奈美逃げんぞ!」
そう言うと悟空は私の手を引いて駆け出した。
「おや、またおいかけっこですか?」
殴られた頬を撫でると鋭い目で二人の走った方向を睨み付けた。


「っと!?あっぶな」
目の前が崖で足をとめる。
「おや。行き止まりですねェ」
清一色の声が真後ろから聞こえて私は崖から飛び降り、瞬時に鳥になる。
悟空の驚いた声が聞こえたが説明すれば平気だろう。
下で待機をしていると悟空が足を滑らせて落ちてきたので私はそれを受け止めようとしたが
「あ、間違えた」
意外に小さめの鳥になったせいで悟空の下敷きになりながら落ちたのだった。

ぐしゃりという音を今度は夢でなく現実で聞いた。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛い、いたい。
内蔵が潰れ四肢が折れ曲がり骨は粉砕しているのが嫌でもわかる。
身体は再生しようとしているがそれまで私は持つだろうか。
『死ぬ』その言葉が頭によぎった。
私は死にそうな体とぼんやりとしてきた思考を振り絞って人間に戻ると悟空の下敷きになったまま気絶をした。

▼赤

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