「ごめんなさい…ついてきて」
そう私は言うと近くの木にもたれ掛かり上を見上げる。
木々が生い茂った森では空は見えない。
私は目を覆って見えない空を想い描く。
しかしいくら想い描いても今の私には闇色しか見えない。
「そんなことないですよ」
ふいにそう言われてそちらを見ればいつもとは違う笑みの八戒。
「笑顔、ひきつってます」
そう言って私は八戒の頬を軽くつねった。
「痛いですよ」
そう言って笑った顔はいつもの八戒の笑顔でホッとする。
「そういえば何で三蔵だけ敬語じゃないんですか?」
言われてみればそうだった。
しかし何故だろうか…?
「僕にも敬語やめてくれます?」
「うん、わかった」
そう言うと私はまた頬をつねった。


「「忘れたフリ」はしてたんですけどねェ」
僕は独り言を呟いた。
「なんか今言った?」
「いえ」
少し前を歩く少女に目を向ける。
"僕や三蔵のように過去に縛られてる"
ソレを知ったのはつい最近だった。
僕はズボンのポケットから昼間拾った『罪』の字の麻雀牌を手に取る。
過去に縛られてると言っても僕ほどではないのでしょうね…
そう考えると小さく自嘲的に笑った。
彼はおそらくあの時の恨みを持つ者。
…でも何のタメにこんな廻りくどいことを…?
そう考えると僕は麻雀牌を握りしめた。


「あ、やっと見えた」
私は開けた場所につくと空を見上げる。
そこには輝く月が空を木を地上を私を照らしていた。
振り向けば手に何かを持っているらしい八戒がソレを握りしめていた。
多分今の八戒は自分の世界に入っている。
そう思いながら私は再び空をじっと見つめる。
「お前生命線短けぇな……」
「…ビックリしたぁ」
見れば悟浄がいつの間にかいて少し驚いた。
多分悟浄に気付かれていないし、二人きりの方が良いかなと、考えその場をこっそり離れた。

▼散歩

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