端末に着信が入る。
青白く画面が光りながら、微振動を繰り返しているそれを手にとり画面を見れば、一通のメールが届いていた。
どうせ政府からのいつもの業務連絡だろう。
はいはい、と気怠げに開いてすぐに飛び込んだ文字に、真澄は目を見開いた。

『――国本丸が現在戦闘中。本丸が手薄になっている時を狙っての奇襲と見られる。
 出陣可能な部隊がある審神者は、至急救援に向かえ』

「奇襲……」
「どうしたがなが、主?」

呆然としながら画面を眺めていれば、近侍の陸奥守が異常を察したらしく声をかけてきた。
そっと隣に寄り添うようにしながら、陸奥守も真澄と同じ画面を見る。
ずらり、と並べられた文章は読み進めるほどに現実離れして見えた。
結界を張っていて、ここだけは絶対に安全だと思われていた本丸が、敵からの奇襲を受けているという事実。
しかもそれが一つの本丸ではなく、国全体で起こっているという事実。
横目で陸奥守の顔を伺えば、固く強張りどこか顔色が悪そうに映った。……前の主の最期と、重なる部分があるのかもしれない。

近侍の事が気にかかりつつも、情報を得る為に真澄は液晶に指を滑らせて下へ下へとスクロールしていく。

未だに続く文章は、奇襲報告から現在襲撃されている本丸の一覧に切り替わったようだ。
審神者ネームがつらつらと並ぶ中、ふと、見知った名前を見つける。
この名前は、ああ間違いない。自分と親しくしてくれている彼女の名前だ、審神者レベルも一致している!
理解した瞬間、さあっと血の気が引いた。

「陸奥! 今すぐ出陣準備をしろ、第一部隊……いや、第二、第三部隊もだ!」
「分かっちゅう!」

指示を出せば、赤い着物がひらりと部屋から駆け出した。
真澄も集中し、刀剣男士と意識を繋ぐ。こういった類いの術は苦手だが、そうも言っていられない。
深い意識の底で審神者と刀剣男士の間に繋がる糸をたぐり寄せながら、真澄は必死に呼びかける。

「緊急事態だ、他本丸が敵の奇襲にあってる。これからあたしらも救援に向かう。
 第一部隊、および第二、第三部隊は至急出陣準備を。非番の所悪いが、ひと暴れしてもらうぞ」

ごく端的に呼びかければ、すぐに了承の返事が返される。
全て伝え終えてふわりと意識を浮上させれば、部屋の外から忙しない音が耳に届いた。
慣れない事に早くも疲弊しかけるが、今ここでへばっているわけにはいかない。勝負はこれからなのだ。

パン! と両頬を叩き、自分に気合いを入れる。

「主がしっかりしないでどうすんだってーの!」

端末をスカートのポケットにねじ込みながら、真澄もまた、部屋を飛び出した。

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