△月□日

初期より人数も倍に増え、本丸もいっそう賑やかになっていた。
人数が増えるのは喜ばしいことだが、それが裏目にでることもある。
その中でも今審神者の中で問題になっているのが、「連絡漏れ」だ。

最初は必要があれば、直接本人に伝えて済んでいたが、人数が増えるとそうもいかない。
審神者にだって自分の仕事があるし、刀剣男士を探すのだって時間がかかる。
なにせ本丸は広いのだ。
一人を探している間にすれ違いになってしまったり、誰かに言伝を頼もうにも、相手が伝えるのを忘れていたり上手く捕まらなかったり。
朝に伝えていても、寝ぼけていて聞き逃していた、なんてざらにある。

「というわけで、本日より本丸に掲示板を導入しました!」

じゃーん! という効果音を背負いながら、審神者が胸をはって大きな板を叩く。
大広間の横の壁に設置された大きな木製のそれには、「第一部隊」というような部隊が書かれたものが4つ。
そして横に「馬当番」「畑仕事」「手合わせ」といったようなものが並んであった。
よく見れば、その板には何かが引っ掛けられるように、いくつもの鉤があるのが分かる。

「主、それは何なが……?」
「当番表だよ。最近連絡漏れがちらほら出始めたから、それの解消になればなって。
 大広間なら皆朝は必ず集まるし、見逃すこともないでしょ?」

きょとんとしながら問いかける近侍、もとい陸奥守に答えながら、審神者は数枚の木の板を取り出した。

「ここに皆の名前が書かれた札があります。これを、よっと」

「陸奥守吉行」と名前の入った札を持ち、審神者はそれを「第一部隊」と書かれた鉤に通す。
すると、カランと軽い音を立てて、札がぶら下がった。鉤の上には「隊長」という文字が小さく記されている。

「こんな風にして、誰がどの部隊に所属するのか。誰が隊長、副隊長を務めるのか分かるようにします。
 内番の当番が誰なのか、っていうのも同じように札を掛けていくようにするよ。
 これは私が担当していくから、皆もちゃんと確認するようにしてね」

そう言うと、集めていた刀剣男士たちからおお、と歓声が上がる。

「分かりやすくていいな! それで、オレはどこに出陣すればいいんだ!?」
「ぼくもしゅつじんしたいです!」
「なら俺隊長がいい! 第二部隊の!!」
「国俊といまつるは第二に入ってねー。獅子王は畑当番」
「なんでだよ!」

……はしゃぐ短刀の横で拗ねて口を尖らせている彼は、本当に平安生まれの太刀なのだろうか。

他の刀剣たちも、わいわいと「あの内番は面倒だ」「出陣したい」など話し出す。
それにまた今度ね、はい頑張ってね、など返しながら札をかけていく。
心配せずとも内番は日替わり制なので、そこは我慢してもらうしかない。

とはいえ、これは導入して良かったかもしれない。
何だかんだで適応してくれそうな様子に、ほっと胸を撫で下ろした。

きっとこれで某馴れ合わない発言をする彼とか、ちょっと物忘れしやすかったり朝に弱かったりする彼らも、ちゃんと確認してくれるはずだろう。

「よーし、それじゃあ連絡も済んだし、各自解散! 出陣がある子たちは時間になったら門の前に集合するように!」

審神者の言葉に、皆が一斉に動き出す。
はーいと声の高さも、返事のタイミングもバラバラな声を聞きながら、本丸の一日が始まるのだった。


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