抜け駆け禁止!

※現代&学園パロ

「いらっしゃいませ」

高校のお昼時間。
昼食のための弁当やパンを得る為に、今日も購買は学生で賑わっていた。
私ははそんな日常の光景に向かって、にこにこと笑みを浮かべて会計を済ませていく。

私がこの購買に勤めるようになってから何年も経つが、なかなか楽しい仕事である。

高校生たちの元気な姿を見ていると、こちらまで若返ったように感じる。
中には名前を覚えてくれる子もいて、その子達と会話するのも楽しかったりする。
そんなことを先輩である同じ購買で働くおばさんに言えば、

「まだ若いのに、年寄り臭いこと言うねえ」

と笑われてしまうのだが。

そんなこんなで、お昼特有のラッシュを慣れた手つきでこなしているうち、ピークも過ぎたのか生徒の数も減って来た。
やはり高校生の元気さというのは凄い。なんて思ってれいば、「あの」と聞き慣れた声が聞こえてきた。
リーゼントの男子生徒。
彼も私の名前を覚えて話しかけてくれる生徒の一人である。
名前は、東方仗助、というのだそうだ。

「いらっしゃい東方くん! 今日はお弁当? パンもまだ種類残ってるよ!」
「あ〜、じゃあこれとこれで」

ぱっぱっとさされた商品をとり、レジに通していく。
ちらりと東方くんの方を見てみたのだが、なんだか少しだけ様子がおかしい。
そわそわしているというか、緊張してるというか。

何かあったのだろうか。
気にしながらもいつも通りに支払いを終え、袋に入れた商品を手渡したところで、「ナマエさんッ!」と名前を呼ばれ、条件反射で背筋が伸びた。

「は、はい、なんでしょう」
「その、こないだ新しく店出来たじゃないっスか」
「ああ。あのカフェだっけ、レトロっぽくて気になってるんだあ」
「まじで!?」
「うん。東方くんはもう行ったの?」

尋ねれば、彼は「まだっス」と慌てて否定した。
と思えば、ぱっと嬉しそうな笑顔を浮かべながら、東方くんはそわそわと視線をさまよわせる。

「俺もまだ行ったことなくて、気になってるんスよねえ〜〜! あー、で、なんつーか、ナマエさんも気になるってんなら、一緒に――どわぁっ!?」
「はーい阻止〜!!」

のしっと東方くんの上にのしかかる、彼よりももう少し背の高い男子生徒。
なんとなく東方くんに雰囲気の似ている彼は――そうだ、ジョセフ・ジョースターくんだ。

「こんにちはジョセフくん。君も何か買うの?」
「いや、俺はただナマエさんに会いに来ただけ! そしたら仗助のやつが口説いて――」
「っ、いい加減どけろよ! あんた自分がどんだけ重いか分かってるんスか!?」
「いや〜ん仗助くんがこわ〜い!」

ナヨォ、とジョセフくんがわざとらしくくねりながら、東方くんの腕を避ける。

「せっかく人が勇気だしたってのに……」
「させるわけねーだろ、抜け駆け厳禁だぜぇ〜仗助。ってことで〜!」

ひそひそと二人で何かを話しているな、と眺めていれば、急にくるりとジョセフくんがこちらに向き直った。
そのままさっと手を握られ、顔が近づけられる。

「ナマエさん、今週末あけといて。俺と、あー仕方ねぇから仗助も。三人でそこの店行こうぜ!」
「はあああああ!?」

ウインクと共に告げられたそのお誘いに、今度は私が笑顔を浮かべる番だった。
何故か東方くんは不満そうだが、まだのしかかられたことを怒っているのだろうか。

「わあ、私も行っていいの? なかなか行く機会なくてさあ」
「もちろん!」
「いやいや、何言ってんだよ、俺は二人で……!」
「嬉しいなあ、楽しみにしてるね」

あそこのお店は見た目もおしゃれだし、メニューも美味しそうなものばかりで、早くもお気に入りになりそうな気がする。
念願のそこにいける、というのもあるが、二人と出かけるのも面白そうで、すごく楽しみだ。
緩みきった顔でにこにことして言うと、何か言いかけていた東方くんが口をぐっと閉じた。

「だ、そうですよ仗助く〜ん?」
「……あ〜〜〜もう! いいっスよ、三人ね三人!」

ニヤニヤと笑いながら、ジョセフくんは東方くんを肘で小突く。

私は仲のいい二人とやり取りを見ながら、早くも週末が待ち遠しくなっていたのだった。




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