―ジョセフとナマエ―

ジョナサンの子孫たちの中で、リーグに参加して全敗したのはジョルノだけではない。

「ナマエーーーーッ!!」
「ああ、ジョセッ――」

気分転換にふらりと歩き回っていれば、目の前から名前を呼びながら駆けてくる巨体に遭遇した。
両手を広げて向かってくるものだから、思わずこちらも両手を広げて受け入れたのだが……失敗した。
つい「子孫可愛い!」精神で忘れていたが、相手は小さい子供なんかじゃなかった。

相手は195cm、97kgという我が侭ボディの持ち主だったのだ。

ナマエが吸血鬼ではなく普通の人間の女性だったなら、ぽっきりと腰の骨が折れてしまっていたのではないかと思うほどの勢いで抱きついてくる。
そのままぎゅうぎゅうと腕に力を入れてくる相手の背中をぽんぽんと叩いてやった。

「ジョセフ、苦しい、骨ミシミシいってる」

そう言えば、渋々だがジョセフの体が離れて行く。
まるで捨てられた子犬のようにも見えてしまって、何故か罪悪感がわき上がってくるのが不思議だ。

「傷心のジョセフくんを慰めてください」
「うん……でも私慰めるの苦手だから、兄さんや友達の所に行った方がいいんじゃない?」

口を尖らせて、ナマエの服の裾をきゅっと握ってくる。
小さい子供のような可愛さに苦笑しながら言うが、ジョセフは首を横に振った。
「さっき行って来たんだけどさー」と肩をすくめながら、盛大なブーイングと共に溜息をこぼす。

「ジョナサンおじいちゃんたちはそりゃもう優しく慰めてくれたけどさ。
 シーザーとか承太郎の奴、慰めるどころか小言言ってくるんだぜ!?」
「ああ……」

承太郎はああいう性格だし、元々ジョセフには厳しい部分があるので納得だ。
シーザーという子は兄弟子だというし、あえて言ったのだろう。
ジョナサンやスピードワゴンはとことん甘いだろうし、いい飴と鞭になったんじゃないだろうか。

この様子だと多分、ジョセフの母親であるリサリサにも厳しい言葉を貰ったのだろう。
紹介された時に二、三言葉を交わしただけだが、あれは相当強い女性だという印象を受けた。

だが残念なことに、ナマエは兄のように上手く言葉を選ぶ事が出来なかった。

慰める、励ます、だなんて苦手中の苦手である。

「そうだなあ、じゃあ、はい」

はい、と両腕を広げてみせる。

「うん?」
「私は皆みたいに上手い言葉を見つけられないから、行動で示そうかと。
 昔落ち込んだ時とか、父さんや兄さんにぎゅって抱きしめてもらったら、凄く元気が出たから」

さっき会った時も抱きついて来たが、あれはほぼ勢いだったので、やり直しだ。

おいで、と声をかければ、ふにゃりとジョセフが破顔する。
やはりジョセフとナマエほどの体格差となると、どうしても苦しさはあるが、今回だけは多めに見よう。
肩口にぐりぐりと顔をうずめるジョセフの頭を、これでもかとなで回してやれば、くすくすと笑い声がした。

「ナマエ、おじいちゃんと同じ事してるんだぜ、これ」
「えっ」
「やっぱ似てンのねー! っと、元気出たのでジョセフ君は戻ります! もうすぐ仗助の試合始まるからな、応援してやんねぇと」

ぱちくりと目を瞬いているうちに、ジョセフはひらりと離れて駆け出した。
大きく手を振りながら走るジョセフに慌てて手を振り返せば、試合終了のアナウンスが廊下に鳴り響く。

「私も応援しなきゃ、だね」

次の試合には仗助が出るんだったか。
こうしてはいられないと、ナマエもまた急いで部屋に戻るのだった。


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