―承太郎とナマエ―
二つのリーグが終了した。
どちらのリーグも白熱した戦いばかりで、見ているだけでドキドキハラハラと落ち着かない。
と同時に、自分もあそこで戦いに参加したいとうずうずしていた。
スタンド……自分には見えない存在だから、苦戦するのは間違いない。
それに柱の男ってなんだ。
彼らにだけはあたりたくない。きっと自分はあっという間に補食されて、はい終わりとなってしまいそうだ。
なんて考えていれば、部屋のドアがガチャリと開かれた。
「あ、ジョータロー!」
「おう」
そこから覗いた姿に、ナマエはぱっと顔を輝かせる。
ぶんぶんと大きく手を振れば、彼がふっと小さく笑うのが見えた。
「えへへへへへ」
「何ニヤニヤしてんだ。気持ち悪いぜ」
「いや、可愛いな〜と思って」
へらりと笑って言えば、承太郎の顔がむっと不機嫌になる。
「可愛いはねーだろ」
「ああ、ごめんごめん」
確かに、17歳男子に向けて言うには違う気もする。
実際自分からすれば可愛いのだが、という言葉は一応飲み込んでおくことにした。
「そういう言葉は、だ」
「ん、うおお!?」
突然背後から顎を掴まれ、ぐいと上げさせられる。
ぽすりとソファーの背に頭を預ける形になりながら上を見上げれば、すぐ目の前に承太郎の顔があった。
腰を曲げてこちらを見下ろしてくる整った顔に、ナマエは一瞬目を奪われる。
「可愛いってのは、あんたみたいな奴に似合う言葉だと思うぜ」
――危険だ。この子孫はとても危険だ。
なんというか色気が凄い。無条件にはい、と支配下に下りたくなる。
こんなイケメンにこの距離で可愛いなどと言われたら、普通の女の子なら心臓が止まってしまうんじゃないだろうか。
「いやあ、ジョータロー……凄まじいね」
「あ?」
「でもこういうのは私じゃなくて、好きな女の子にやった方が破壊力抜群だと思うよ!」
そう言って、ナマエは承太郎に向かってぐっと親指をたてて見せる。
良かったねジョータロー、この方法はどんな女の子でもきっとイチコロだよ!
でも少し力強すぎるかな。
私だから良かったけど、普通の女の子は首痛めちゃうかもね。
という、丁寧なアドバイス付きでコメントも返してやった。
のだが、彼は感謝を述べるどころか、何言ってんだこいつというような表情を浮かべていた。
おいおいマジで言ってんのか。こいつ頭大丈夫か。というような顔だ。
承太郎はのっそりと体を起こすと、重い溜息を吐きながら帽子のつばを下げた。
きっとさっきの試合の疲れが出てしまったのだろう。
「お疲れさま」と、今更だが声をかければ、複雑な感情のこもった声で「ああ」と返された。
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