810の日 | ナノ


ここまで一緒に過ごすと、色々なことがわかってくる。
ローは猫のくせにどっちかというと犬のような性格をしている。家を出るときは必ず玄関で見送ってくれるし、家に帰ると玄関で必ず出迎えてくれる。私が猫に対するイメージが違うのかもしれないけれど、もっとふらふら自由気ままで、望む時だけ寄って来ると思っていたので、いつもべったりすり寄って来るローは予想外だった。
心の傷が癒えるまでなんだろう、と思っていたけれども、半年経った今でもそうなので、これからも変わらないのではないかと思う。つまり、これが彼の性格だと。

「ロー、私もう寝るけど…」
「…おれも寝る」

キッチンやら、仕事をしていても、そばに寄って来る。別に嫌ではないし、邪魔をしてくるわけでもないので、問題はない。けれどさすがに、一緒のベッドで寝る、と言い出したときには、どうすれば良いのかと頭を悩ませた。

愛玩用、とはいえ、そんなふうにローと付き合う気にはならない。ローは同居人と家族の間、曖昧だけれど確かに安心する、そんな存在だから。そう考えると、高校生くらいの年齢の彼といい年したOLの自分が一緒に寝るなんて何だかあまり良くない気がして、避けたかった道なのだ。

空いている部屋を片付けて、そこをローの部屋にしようとするも、断固拒否され、それならソファで寝ると言われ、長身の彼がソファで寝るなんて収まりきるわけないのだから身体に負担がかかると、それはさせたくなかった。
ローを私のベッドに寝かせて(ローが寝ついた後にこっそり抜け出し)ローの部屋(仮)に布団を敷いて寝直す、というのを実施しても、朝起きれば隣にローが寝ているので意味がなかった。

「…ロー、くっつき過ぎじゃない…?」
「そうか?おれはこれくらいが丁度いい」
「………そ、う」

そうして仕方なく、今日も同じベッドで寝ることになるのだ。
しかも性質の悪いことに、日を追うごとにローのスキンシップが激しくなってきている。最初は本当にただ一緒に寝るだけだったのが、距離が縮まり、抱きしめられながらになり、…そして最近は。

「名前…、」
「ロー…?」
「ここにキスしてェ、だめ?」

わざとなのか、耳元で囁くように言う。

「額だけじゃ終わらないくせによく言う…」
「しないと寝れねェ」
「……唇はだめだよ、」
「ん、わかってる」

愛玩用だからこういうスキンシップが必要なのか、そうじゃなくて元々ローがこういう性格なのか。どちらにしろ確認がとれないことには変わりがないので、ローとの関係が一線を越えてしまわないように私が抑えるしかない。一度超えてしまえば、元には戻れないのだから、そうならないように。

額、頬、目尻…唇以外の部分に余すところなくキスが落とされる。

「くすぐったいから…もう気は済んだでしょ?」
「まだする」

前に一度、何も言わずされるがままにしていたらいつまでも終わらなかったので今は制止をかけるようにしている。

「駄目。もう遅いし、寝よう?」
「……足りねェ」

止める方法はただ一つだけれども簡単だ。

「ロー」

名前を呼びながら、じっとローの目を見つめる。

「わ、わかった、わかったから…そんなに見るな、」

そうすると照れるのかフイッと顔を逸らし、こちらに背を向けて寝る体勢に入るのだ。こんなことで照れるなんて、ひとの顔に散々キスしてるやつがとる行動ではないと思うのだけれど。

いくら相手がローとはいえ、少し火照った熱を冷ますように一息ついてから私は目を閉じた。



(2)見つめ過ぎると照れてしまいます。


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