さて、どうしようか。 | ナノ

両手に花?ふざけんな。なんだって私がこんな風に悩んだりいらいらしたりしなきゃいけないんだ。おかしい。だって悪いのは全部あいつだ。彼氏と彼女じゃなかったのか?え、もしかしてそれすら私の思い違いだった?

丁度良いところにシャチが教室から出て来た。私はシャチの首根っこを掴んで、正面に向き直る。

「うっわ、なんだよ名前!!驚かせんな!」
「そんなのいいから、答えて」
「え、なに、なんでお前そんな怒ってんの、俺なんもしてな、」
「ローと私って、付き合ってるよね」
「いです、…ってはあ!?」

望む答えを言わないこいつをがくがく揺さぶってやる。

「ローと私って彼氏と彼女だよね?私の勘違いとかじゃないよね!?」
「やめろ、揺するな、答えらんねえだろ…!!」

未だぐらぐらしているシャチに早くと急かす。お前さ、ほんと何言ってんの、という視線が返ってくる。

「今更なんでそんなこと聞くんだよ。ローがお前に告白して、お前もローのことが好きで、付き合い始めて、もう1年以上経ってんじゃねェかよ」

何だよ意味わかんねって顔をしているシャチを横目に睨みつけて(完全に八つ当たり)その場で携帯を取り出す。

「あ、もしもし、ペンギン?訊きたいことあって。あのさ、ローと私って付き合ってるよね?」
「おま、ペンギンにも訊くのかよ!!」
「シャチうるさい黙ってろ」

電話したペンギンには、お前声でかい耳痛い、と言われた。なんだ、私が黙れってか。

―――なんで今更そんなこと、

「いいから答えて」

―――片思いの時からシャチも俺もお前ら二人を見て来たんだぞ。ローが告白して、付き合い始めてもう1年以上経つだろう

「ありがと、ペンギン。勘違いじゃないことがよくわかった」

どうやら付き合っていることは私の勘違いではないらしい。だけれども、それならそれで余計に腹立たしい。じゃあ、やっぱりなんで。なんであいつはあんなことばっかり…!

帰ろう。あいつなんかもう知るか。

「おい名前、ローの教室そっちじゃないぞ、」

シャチに言われる。でも、決めたから。もう帰るって。

「名前、もしかして、もしかしなくても、ローおいて帰るつもりじゃ」
「知らない帰る」

シャチがぎゃんぎゃん喚いている。頼むからローのところ行って、あいつお前来ないとめっちゃ不機嫌になって手に負えないから?こっちだってもうとっくに手に負えてないんだよ!!シャチを振り切って階段へ向かう。

シャチは、「げ」と恐怖の混じった声を上げた。前方から、諸悪の根元が近付いてくる。相変わらず余計な付属品がいくつかくっついている。

「お前、なんで来ねェんだ」
「その人達と帰んなよ」
「はあ?何言ってんだよ」
「……もう、ほんと、うんざり」

目の前の相手の声が若干不機嫌からどんどん不機嫌度合いが増していく。いつもなら気にしているかもしれないそれも、今は全く気にならない。

「おい、」

その後に続くだろう私の名前が口に出される前に、ぱん、と響いた小気味良い音。なんだか右手が痛いような気がする。自分が叩いたらしい。目の前の相手、ローの頬を。

「てめェ…」

一瞬目を見開いて驚いていたローも次の瞬間には鋭い眼光を光らせてこっちを睨んだ。残念。そんな顔をされたって今は全然怖くない。私は多分今までしたことのないくらい思いっきりローを睨んでいた。そのまま脇を通り過ぎる。手ぐらい掴まれるかと思ったがそんなことはなかった。そうか、ローの手は付属の女の子たちで一杯だもんね。私はそのまま、下駄箱まで向かった。


* * *



ローの頬を叩いたあの日、家に帰ると携帯の着信履歴がすごいことになっていた。携帯はひっきりなしに鳴りっぱなしで、切れたと思ったらまた鳴る、鳴る鳴る。中にはメールもあったけれどそれはシャチとペンギンからだった。二人には適当に返信して、着信のインターバルが長くなったのを確認してからローの携帯を着拒に登録してやった。

それから土日を挟んで数日間、ローとは一切の関係を絶っている。前はいつも一緒に帰っていたけれど今はそんなこともない。ペンギンとシャチには心配されるし、仲直りしろとか(特にシャチが)言ってくるけど、私にとってはそんなレベルの問題ではないのだ。

「ホント、仲直りしてくれよ!なあ、ペンギン」
「俺はとやかく言うつもりはない」
「お前ってヤツは何でそうなんだよ!なあ、名前、仲直り、仲直りだよ」
「本当シャチうるさい。私帰るから。じゃあね」

そうやって結局何日過ぎただろう。まあぶっちゃけていうと一週間ちょっとしか経ってないけれど。相変わらずシャチはうるさいままだ。本人がうるさいからあいつのように着拒が出来ないのが残念。私はもう、このままでいいと思う。
それぐらい怒っている。


1.キレる。



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