9月になって、学校が始まった。
結局夏休みはローと外に出掛けることはなく、会うとしたらいつもローの家でひたすらぐだくだしていた。
「まだ暑いー」
始業式の後、クラスで幾つかの連絡事項が伝えられて、夏休みの宿題を提出し、担任が少し話をして、今日は解散。
「まだ夏は終わってないのに、なんで夏休みは終わるんだか」
「そういうもんだろ」
シャチやペンギンに会うのは、二人がローの家にやって来た日以来だった。
「シャチってあんなにうるさいヤツだったっけ?」
―――よォ!名前!!ひっさしぶりいいいいい!
―――え、え、なにその反応、何だよ、寂しかったの俺だけ?ねえ俺だけ!?
「今日は特に、うるさい通り越して騒音だったな」
―――シャチ、うるさいぞ。静かにしろ。
―――ペンギン、お前まで…
2人とも、少し焼けていた。
「…にしても、お前は何でこっち見ねェ」
「あ、はは…」
久々の帰り道、夏休み二人で出かけることもなかったせいで、手を繋いで帰ることがもう恥ずかしい。
「なに今更照れてんだよ」
「今更って、だって…って、ちょっと…ッ」
より強く絡められて、顔に熱が集まる。
「もっと恥ずかしいことしただろうが」
「それを引き合いに出すな…!!」
それもそれで恥ずかしいし、今のこれもまたこれで恥ずかしいのだ。
「ああ、もう…」
ふい、と顔を反らした。
「名前、」
耳元でローの声がして、身体がびくりと跳ねる。
「こっち向け」
「……絶対やだ」
いつもより少し楽しそうな声に反抗して、頑なに反らしたままでいる。ろくなことは考えていないのだ。
「照れてるお前もかわいいが、顔が見られないんじゃあな」
だけれども、ローから飛び出たびっくり発言に思わずそちらを向いてしまった。
「はァ!?なにいって、」
そうして触れあった唇に、気を失いそうになったことは、目の前の馬鹿やローには言わないでおく。
7.明ける。
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