リーダーの家、と連れて来られた場所は何の変哲もないアパートの一室だった。扉を開けたデイダラが入れと顎で促す。緊張しながら足を踏み入れると、奥の部屋から話し声と思われる雑音が聞こえる。

自分が暁の一員であるという事実を、目まぐるしい環境変化の中で忘れかけてしまっていた。昨日のデイダラの話し振りでは暁そのものが存在することは確かだったけど、その実態はこれから自分で確かめないと分からない。尾獣狩りを行っていないこの世界の暁は一体何を目標に掲げ、行動しているのだろう。


「ゆうこ! 待ってたぜェ!」
「わあっ」


部屋に入った途端、抵抗する間もなく覆い被さってきたのは間違いなく飛段だ。力ずくで振り払うと、意外にもすんなりと諦めた彼は「歓迎のハグだったのによぉ」と呟きながら私から離れた。


「これ以上はデイダラちゃんが怖いから止めとくか、ゲハハ」


ちらと後ろのデイダラを見ると起爆粘土の入った袋に手を突っ込んだ状態で飛段を睨み付けていた。


「元気そうで何よりだな」


低く、落ち着いた声が雑然とした空気に緊張感をもたらす。私はデイダラに続いて近くの空いた椅子に座り、声の主であるリーダーに顔を向けた。リーダーの他に小南、イタチ、鬼鮫、角都、飛段が円形のテーブルを囲んで座っている。アパートの外観から想像した以上に広めの部屋の中、リーダーの続きの言葉を固唾を飲んで待つ。


「まずはゆうこ、お前の体調不良に気付かず任務を任せてしまってすまなかった」
「いや、リーダーのせいじゃ…」


意識を失う前の私がリーダーの任務を遂行していたのはこの世界でも同じのようだった。


「新入りのゆうこちゃんが疲労で倒れるって、どんな任務やらせたんだリーダーさんよォ」
「飛段…お前は黙っておけ」
「んだよ角都、気になったことを聞いてるだけなん」


「犬」というリーダーの言葉が飛段を遮る。

犬?

脈絡のないその単語にきょとんとしている私を尻目にリーダーは続ける。


「迷い犬の捜索だ」


飛段だけでなく私も、使い古されたコントのように椅子から転げ落ちてしまいそうだった。





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