半年ほど前に木の葉を抜けた。
里の人間と不和があったとか、置かれている環境に嫌気が差していた訳ではない。むしろ私は木の葉が大好きだったし多くの仲間にも恵まれていた。だから突然姿を消した私を、かなりの人間が探し回ってくれたという。しかし暁に入ったことが里中に知られてからは、代わりに追い忍が抹殺目的で私を探すようになった。

年下のサクラやナルトは私に懐いてくれている妹や弟のような存在だった。結果的に彼らを裏切るような形になってしまって申し訳ないけど、もし次に会うことがあるとしたら命懸けで戦うことになると覚悟はしていた。


「さっきの状況を納得いくように説明して」


それなのに、あんな形で二人と会うことになるなんて。私を見ても表情に全く負の感情を出さなかったのが逆に不気味だった。


「説明ってなんのことだよ」
「あの三人がここに来るなんて有り得ないじゃない」


百歩譲って見舞いに来てくれただけだとしても、デイダラがあんなに自然に彼らと会話をして、何もせずただで帰す筈がない。特にナルトとカカシ先生には相当な恨みを持っているのだから。


「どう考えても普通に見舞いだろ」
「…だから何で見舞いに来れるの」
「何でって?」


完全に噛み合わないやり取りが続き、どうやったら疑問の核心を突き止められるのか分からなくなってきた。聞きたいことは山ほどあるのに、その一つ一つをどう言葉に表せばいいのかも分からない。


「同じ里の人間が見舞いに来ることの何が納得いかないんだよ。しかもさっき殺しにきたのかって訳分かんねーこと言ってたし…フォローするこっちの身にもなれってんだ、うん」


私と同じく噛み合わないやり取りに苛々していたのだろう、デイダラの口調には刺があった。しかしその言葉の後半はほとんどわたしの耳に届かなかった。


「同じ里?」


さも、私が今もそうであるかのような違和感のある表現。


「ここってどこの病院?」
「木の葉病院だろ。…やっぱりもう少し寝てたほうがいいかもな、完璧に寝ぼけてるぞお前」


デイダラが言い終える前に、私はベッドを抜け出し裸足で病室を飛び出していた。





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