「たかが犬っころ探すのに二人も派遣したのかよ」
「そうだ。手の空いていたゆうことデイダラに任せた」


飛段は大きく息を吐いて椅子にもたれた。いきなり体重のかかった背もたれが小さく軋む。


「前から思ってたけどよォ、俺たちいつまでこんな生ぬるい活動続けなきゃなんねーんだ?」
「この世界が平和である限りだろうな」
「俺はもっと派手なことやれると思ってここに入ったのによ…とんだ誤算だったぜ」


不穏な空気が流れ始めている。飛段の喧嘩腰はいつもの事として、リーダーの言葉の意味が分からない。ここでもまた、元の世界と食い違っている。話の内容を掴むために最後まで聞かなければ。ふと気になって隣のデイダラを窺うと案の定、粘土に没頭していた。


「そもそも戦争で世の中が荒れていたのは何十年も前の話ですよ。貴方の言う派手なことがしたいのならば犯罪でも犯すしかありませんねぇ」


いやそもそも私たち犯罪者じゃん…危ない、うっかり鬼鮫に突っ込むところだった。


「普段の会合にほとんど参加しない奴が偉そうに物を言うな」
「なんだ角都ゥ、お前までこいつらの味方かよ!」


見かねたようにリーダーが咳払いをすると乱れた空気に緊張感が戻り、さっきまで愚痴ばかりもらしていた飛段は不満げな顔で口を閉じた。


「今後の我々の活動についてだが……」




一連のやり取りで、この世界の暁は私の知っているのと全く異なる組織だということが分かった。昔の活動は戦争の請負いが主だったけど、時代が変わり争いの無くなった世の中になったことで、便利屋のような組織として活動している。そして今は、人手不足の木の葉に一時的に専属しているらしい。飛段が「生ぬるい活動」と突っかかった原因がやっと分かった。短気な彼が不満を漏らさなければほとんど話が理解できないまま終わってしまうところだったし、この時ばかりは飛段に感謝だ。

今後についての話はほとんど耳に入らないまま会合が終わり、既に何人かいなくなっていた。不意に肩を叩かれ振り返ると、目の前に差し出された花束。紙で作られたそれを持って立っていた小南がにっこりと笑った。


「見舞いに行けなかったから、退院祝いよ」


こんなに穏やかな小南の顔を見たのは初めてだ。






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