どこか出掛けようよ、と試すように投げた言葉はあっさりと無視された。カチンと来てもう一度言うと予想通りすぎてつまらないくらいの刺々しい返事が返ってくる。

「オイラ今日は創作活動で忙しいんだけど、うん」

何が 今日は、だ。そーさくかつどうしてない日なんて無いくせに。

「あーそうだね忙しいよねごめん!じゃあ飛段とどっか行ってこようかな」

ちら。こちらに背を向けて粘土を弄っているデイダラの動きが止まったのを見逃さない。

「確か飛段も任務休みって言ってたし。あいつとデートしてこよっと」

わざとらしく大きな声で言ってやると、デイダラはいきなり両手を上げて伸びをしだした。そして重そうに腰を上げると私のほうに向き直る。

「今日の創作はもう切り上げる」
「えーなんで?」

珍しいねー。不思議そうな表情を顔に貼り付けていると、今日は粘土の質が悪いだの芸術家には休息が必要だのとって付けたような言い訳を始めながら目の前まで近づいて来た。何とも白々しい。

「そっか、お疲れさま。じゃ、私は飛段と遊びに行ってくるね」
「え」

目に見えて焦りだした姿に笑ってしまいそうになったけど我慢する。

「なんでそうなるんだよ」
「何が?」
「…だから、オイラも暇になったって言ってんだろ、うん」
「知ってるよさっき聞いた。それと私が飛段とデートするのと何の関係があるの」

飛段と、というのを強調する度にいじめ甲斐のある反応を返してくれる。あぁ楽しい。自分の思い通りにならずに苛々しているのが空気で分かる。あんたの思い通りになんかなってたまるもんか。私は常にあんたの上にいたいのよ。少し高い目線から見下ろされているはずなのに逆に見下ろしているようなこの感じ、とても気持ちが良い。

「…んで飛段なんだよ」
「ん?」
「なんでオイラじゃなくてあいつを選ぶんだよ!」
「最初に誘ったのにデイダラが断ったからじゃん」
「ぐ…それは」

悔しそうに下唇を噛む姿がなんとも愛らしい。

「あのねデイダラ。ちゃんと言ってくれなきゃ分かんないよ。私にどうして欲しいの?」

デイダラの形の整った眉が歪む。堪らない。ね、どうしてほしいの?ねえねえ。きっと今の私はポーカーフェイスを気取ることを忘れて、気持ちの悪い笑みを浮かべているのだろう。それに気付かない程に余裕がなく、目を伏せている黄色い小動物。

「オ、オイラと…一緒に…」

そんなに悔しい顔をするならやめればいいのに、それが出来ないんだよね。何よりも自尊心を傷付けられることを嫌うあんたが、こんな情けない姿を晒す羽目になっても譲れないことがあるのだ。私はそれをちゃんと知ってる。

「……居ろ」
「お願いするのに命令ですか」

「…く、…居て、くだ…さ、い」

尻すぼみになりながら言い終えると同時に息を吐いたデイダラは、やり切ったという達成感とそれに勝る私への敗北感でとても複雑な表情をしている。よくできました。褒めてあげる。不服そうだけど。

一方私は勝利と優越がもたらす脳内麻薬でなんとも快感である。
そう、詰まるところ私は彼の人一倍高いプライドをへし折るのが楽しくて楽しくて仕方ないのだ。

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