「あんたの芸術は薄っぺらい」


ぴしゃりと言い放ったまつこの表情は無機質な人形のように冷たい。


「自爆することの何処が美しいんだよ。身体ぐちゃぐちゃに吹っ飛んで、跡形もなく消えて、それの何がゲイジュツなの? どんだけ自分に酔ってんだ」


思いつく限りの悪態をついても尚、まつこの口は閉まらない。外套の赤い雲が、それを着ている人間の白い肌とは対称的に薄暗い空間で鈍く光っている。


「久しぶりに会ってその言い草は酷いな、うん」
「はっ、何。久しぶりに会ったら優しい言葉でも掛けてくれると思ってたの。 感動の再会みたく泣いて喜べばよかったかな?」


今からしてあげようか。ってもう遅いよね。はは。
叩きつけるような雨音に少しも怯むことはなく力強く発される言葉。こんなにも語気は荒々しいのに弱さを感じてしまうのは何故なのか。


「ねえ。私あんたが爆発したこと知ったとき、笑いが堪え切れなかったの。サスケを殺す!とか言って威勢よく喧嘩売って、あっさり死んじゃうんだもん。ほんと何しに行ったんだよって感じ。せっかく角都に両腕直してもらったのに結局意味なかったよね!死んでまで笑わせてくれるなんて、あんたほんとすごいよ。……でもさ、そんな風に馬鹿にするのもできないんだよね、もう。それはちょっと残念っていうか。いつもの悔しがる顔が見れないと思うとね。別に死んだのが悲しいとかじゃないけどさ。むしろ居なくなって清々してるし、」


聞いていられず名前を呼ぶと、以前より痩せた女の肩が大きく震えた。


「まつこ、俺は今此処に居る」


人形のようだったまつこの顔がぐにゃりと歪む。再会して初めて見せた人間らしい表情に安堵するのも束の間、まつこが俺に向けてきたのは笑顔ではなく、憎悪に満ちた顔。


「居ない。こんなの偽物だ。お前はデイダラじゃない」


紛れもなく俺は今此処に存在している。しかし寄せ集めで作られたこの身体は自分のものではない。その上、転生の術が解かれたら俺の意識はあっさりと途切れてしまう。そういう意味ではまつこの言葉は間違っていないのかもしれないが。


どん。体重をかけて胸に突き刺された刃物は、俺の痛覚に何の影響も及ぼさない。
顔を上げて俺の目を見つめるまつこは見慣れた女の泣き顔をしていた。


「そんな、汚い色じゃ、なかった。あいつの眼はもっと綺麗なだった」


泣きじゃくるまつこの言葉は、どうしてだろうか、ちっとも心に響かない。
ごめんなどうやら人形みたいになっちまったのは俺の方みたいだ。

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