(学パロ。中3受験生黒白双子と高校生Nさん、白とNの黒片思い話で白VSN)
君、ブラックが受験する学校しってる?にっこり笑って現れたのは、長い緑髪の整った顔立ちの男―N。あたしはこいつを見て顕著に顔に「うえ」といやな顔を出す。そう嫌わなくても、苦笑いされてもあんたのそんな顔なんざ見たくもないわと視線をはずし参考書を眺めてさらさらとノートに数式を書いていく。「ああそれ間違えてる、xは―」私の右肩から覗き込むようにノートを見るNにぞわりと鳥肌がだって思わずNの顔を押しのける。
「キモい、覗き込むな」
「失礼だな、女子は皆僕がこうするのを望んでるよ」
「は、妄想じゃないの?私はこんなの鳥肌もので嫌だわ」
「君は特殊だよ。まったく、ブラックの双子が君だとは思えない、遺伝子レベルでありえない」
「テメェのそれこそが遺伝子レベルでねーよだっつの」
退けたNにため息をついてそう吐き出せば、口が悪いな―と唇を撫でられて触るなと白い手を叩く。ぱあん!と鳴り響いた音は静かな図書館に響くけど、生憎今は人がほとんど居ないからとがめられる視線のひとつもない。
「何、ブラックが受験する学校?芸術系の高校だけど」
「それ、もしかしてK高校?」
「そう、だけど」
「…Kか。あっちには…な…」
「…?」
首を傾げればはっと気づく。ああ、そうか。Kって、Nの「お父さん」が関係してる―。
「で、君は?」
「え、あ、あたしは…R高校、だけど」
「…K中学の近く、だけど、あまりレベルは高くないはずだ―ホワイト、そんなに頭悪くなかったと思うけど」
「お母さんになんでもやらせてるから、手伝いとかしたいし…」
「…ふぅん、つまり家族を思ってってこと?まあ、あそこは入学金もそんなに高くないしね。ブラックの学校は結構かかるし」
「そういうわけじゃないわよ、…どうせブラックが居ないならどこだって一緒よ」
「ならブラックと同じ学校へ進む――わけには行かないか、…絵、下手だもんね?」
「っ!!」
くっと笑われて私の頬は赤くなる。確かに!確かにそうだけどっ。…ブラックを"私”が束縛するわけにはいかない。どうせ、私の気持ちなんて通じるわけもないし、通じちゃいけないんだから。Nが隣に腰掛けて腕を組む。そしてしばらく考えて―嫌な笑いを浮かべた。
「…僕が通うP学園は芸術も、スポーツも両方名を轟かせているのは知ってる?」
「…知ってるわよ。あたし、P学園にいかないかって言われたから、担任に。推薦とか、言われたけど…やめようと思うし」
「なら話は早い。ブラックと一緒にうちの学校へくるといいよ」
「……は?」
ぽかんとすればこの男は言い出す。「ブラックも君も推薦で、通るはずだ」と。え、何、この人やっぱ頭おかしいんじゃないの?しどろもどろになればNは言う。
「ああ君がブラックと一緒に居れる様に、じゃない。"僕”がブラックと一緒に、一年学園生活を送るため、だ」
「…N、って」
「高2だ。君たちが入ってくれば、高校3年生になる。…一年、それが僕にとっての最後のチャンス。それを僕がつぶすわけがないだろ?」
「…は、ブラックの未来も利用するわけ?」
「彼にとって僕の学校に来ることは消して悪いことじゃない。もちろん君にとっても、ね」
「…私が一年でこの想いをあきらめられるとでも?」
「一年使って、どっちにも転ばなければあきらめるんだ。僕も、卒業までにだめならば―さっさと諦めていいとこの令嬢とでも、結婚するさ」
「…何よそれ。最悪私たちどっちも、報われないんじゃない」
「スリルがあっていいだろう?僕と君の勝敗は五分五分だ。彼が、別の誰かを選ぶ可能性のほうが高いわけだし」
ほら、どうする?意地悪く笑われて私の何かがぶつっと切れた。立ち上がり、Nの腕を引いて本棚の間に隠れれば、ぐいっとNのネクタイを引っ張って顔を近づける。
「…絶対負けない」
あんたみたいな奴にはね。そう言ってやれば、Nは綺麗に見惚れるほどの美しさを纏い笑った。
一年間の勝負
(ところで離してくれないか、このままじゃまるで君とキスする寸前みたいで人に見られたら僕は一生の恥をかく)(それはこっちの台詞だ!)(僕の唇はブラックに捧げると決めてるからね)(ふざけんなそんな口切り落としてしまえ!)(口が悪いな、ホントに双子?)(うるっさいわね、消えろ坊ちゃまめ)
10.10.06