あ、と。Nが通り過ぎた子供を見て呟いた。どうしたの、尋ねてみればあれ―と彼が緩やかに視線を向ける。幼い子供が父親に抱きついて、肩車をしてもらってる。それを見て一瞬「小さい頃してもらったことないな」と呟いた彼は、なんでもないと緩やかに笑う。誤魔化す事はないのに。俺もあまりしてもらった記憶はない。父は母と俺、そしてホワイトを残していつも色んな地方へ仕事に出掛けた人だから。今も変わらず家に帰ってくることは滅多に無い。別にそれがどうと思うわけでもないし、気にも留めない。だけど思えば、僅かに寂しかったのかもしれない。



「N、」

「―うん?」

「肩車は出来ないけど、手なら繋げる、よ」

「…そうだ、ね」



きゅ、と。Nの白い手を握れば、僅かに指先が冷たくて。「冷たいよ、N」「ブラックの体温が、高いんだ」そんなやり取りをして俺たちは歩き出す。肩車も出来ないし、俺もNもお互い「父親」にはなれないけど。でも、代わりに側に居てお互い手を繋ぐことは出来る。だから、寂しがるくらいなら、俺に甘えて。そういったら、じゃあ次は抱っこで―なんていわれたから俺はすかさずその手を離した。



肩車の代わりに手を繋ぎましょう

(嘘だよ、ブラック。本気にしないで、)(…ば、か)



10.10.05


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