例えば彼に出会わなかったらどうしていたんだろう。考えても思いつかない。すでに彼という存在は己の人生に組み込まれ、その存在が消えることは絶対的にないと断言できる。故にいくら考えようともその存在がなければなんて憶測はひとつの妄想にすらならない。考えるだけ無駄というのはこういうことを言うのだろう。では逆に自分も彼もまっとうにごく普通に出会っていたら。出会わないのではなく出会っているを前提にした場合それなりに考えられるかと思えば、そうでもない。普通とは人の数ほど人によって「ある」のであり、何が普通で何が異常かなんて人それぞれだ。故に考えるためにもう少し設定を細かくして見る。ただのトレーナーと、ただのポケモン好き。そう考えた場合きっと何事もなく他人として終わるんだろうと予測できる。しかしこれも結局は妄想のひとつになっただけであり結局のところ意味はない。彼という存在が消えることはないのだから、もしもなんて考えるだけ無駄だ。何があろうと己は彼に出会うための縁を結ぶことになるはずだ。自分と彼の繋がりはもはや運命的なものであり、どんな状況であろうと他人同士ならば縁が必ず結ばれるはずだから。それを生かすも殺すも己次第となるわけだが、彼をなくすような選択をするはずもない。



「だからボクから消えようとしないでね、ブラック」

「…?」

「あ、わからなくていいよ」

「…Nこそ俺の前から、消えようとしたら、…手足折ってやるからね?」

「それは素敵だ、じゃあボクはその手足を削ぎ落としてあげるよ」



抱きついてもらえなくなるのが残念だけど。にっこり笑えば、握り締めた手に力を込めた。



既に「私」の一部たる「彼」を手放す方法などありません

(彼が消えた場合さて私はどう狂うのでしょうか。仮定など意味はないのですけどね)



10.10.14


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -