(ブラック手持ちエンブオー(カークス)視点)



主人はよく緑の髪の彼と手を絡ませる。もちろん人前ではしない。世界広といえど、それらに寛容な人間など少ないものだ。だからこっそり、会えたとき二人は手を絡ませてほんの少しの時間を共有する。時には緑の髪の彼が主人の耳元に唇を寄せたり、項に軽く鼻を押し付けてみたり、遊ぶように主人に絡んでいることもある。そしてそれらを俺やほかのポケモンが見ていれば、ひっそり静かに目を細め「内緒だよ」と笑う。誰にも言うはずもない事なのだが、彼はきっちり口止めしてくる。まあ俺もほかの奴らも彼が嫌いではないし、いいのだけど。ただ困るは主人の片割れたるあの少女。がみがみ怒るに決まっている。



「ねえ、カークス。…ブラックがNにセクハラ受けてなかった?」



俺をボールから出してしゃがみこみじぃっと見つめてくる少女。ああ、だめだ、その目は怖い。凍て付いていて不自然に顔に陰りがある。怖いって、ホントやめてそれ。ぶるぶる震えて「ない」とうそをつけば、しばし見つめられ「ふぅん」とそれだけを返され少女は立ち上がる。すらりとショートパンツから伸びる白い足。そのままでいれば美しい足だというのにだんだんだんだんだんだんと地団駄を踏んでいるから、どうしようもない。



「いいんですか、うそなんてついて」

「真実(ほんと)のことをいったら、どうなるか分かるだろ?」

「それはまあそうですけど。…ま、私たちはポケモン、主人が愛した人が内緒というなら、主人の言葉も同然、それを守るだけです」



ケンホロウで主人にアイオロスと呼ばれた古株は、ボールを軽くつついて見せた。ボールに戻された俺はため息をつく。ああまた今度、彼が主人に会ったときは言って見るか。そろそろ彼女が嗅ぎ付けそうですよ、と。そしたら多分彼は言うだろう、「それがまた面白いんだ」と。



一時の嘘は彼の楽しみのため

(2010.10.06〜10.20)


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