(ED後設定。空ぶらぶらお散歩のNさんのお話)



サヨナラ、と言ったときブラックは顔を歪め、ホワイトは泣きそうな顔をした。ああ、僕は君達に思ったより、好かれていた―と思っていいのかな。ブラックは、僕の頬を撫でて、そして僕が光の中へ消えていくときさよなら、と小さく唇を動かした。ホワイトはばか、と光を吸い込む瞳から涙を零し呟いた。確かに僕は馬鹿だ、果たせなかった理想、犯した罪をどうすればいいか迷い、彼らのもとではなく孤独の中で探す事を選び、その上でまだ彼等に、忘れて欲しくなくて、僕という存在を覚えていて欲しくて、あんな託すような真似をした。



「―僕は馬鹿だ。そんな僕から逃げない君も、…きっと大馬鹿だね」



僕を運ぶゼクロムの背を撫でれば、大きなその瞳は一瞬ちらりと僕を見た気がする。けれど彼は何も答えず、ただ空を飛んでいく。―ああ僕だけの答えを見つけたとき、君達に会いに行きたい。そしたら、サヨナラじゃなくて、お帰りといってもらえるだろうか。本当はサヨナラの言葉に、僕はお帰りが欲しかったのかもしれない。待ってといって欲しかったのかもしれない。けれど、僕を馬鹿といったホワイトや、震える手で僕の頬を撫でてさよならと呟いたブラック。彼の言葉ははっきり僕の背を押してくれた。次に出会ったとき、僕は君達に謝りたい。そして、有り難うと―言いたい。



「ゼクロム…一緒に来てくれて、有り難う」



伝説といわれしポケモンならば、僕から逃げたいのならそう言ってくれればよかった。けれど彼は逃げず、僕を背に乗せてくれた。だから僕は静かに囁き、遥か彼方の遠い異国の地へ向かい目を瞑った―。



何時か貴方にありがとうを、

(2010.9.30〜10.05)


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