僕の頬を撫でる君の指先は僅かに温かい。何時ものように、僕が現れた場所に彼が後からやってきて、僕は僕の理想を語りそれを彼が聞いてくれていた。けど突然の雨、狐の嫁入りというやつか空は青く晴れているのに雨が降っている。誰もが慌てて建物に入る中、僕は別に濡れてもいいと立ち尽くしていたが彼が「風邪、引く」と腕を掴み、近くの民家の軒下に避難させられた。どうせ直ぐ止むし多少濡れたところで早々風邪を引くほどやわなつもりはないけれど、彼の心配を無碍には出来ず仕方なく黙って透明な空から降り注ぐ雨粒を見つめた。そんな僕の頬を、彼がふいに撫でる。何してるの、そう聞けば赤みがないから、冷たいのかと思ってとか細く言われぷっと吹き出す。体温は余り高くない方だし、僕は元々冷えている。頬に赤みがさすことも昔からないし暑くても平気な顔もしてられる方だ。だが彼は僕をよく知らないし、僕もまた彼を知らない。だからつい意地悪をした。いや、彼の先ほどの心配の声がまた聞きたくて、僕は嘘を吐く。



「具合が悪いのかもね、」

「―!」



瞳を揺らす彼が可愛くて面白くて。白い少女に見つかれば、苦虫を噛んだような顔をされるだろうが構わない、穢れた僕が純粋無垢な存在に触れて浄化された方が世界のためだろうと意味の分からないことを考えながら彼を不意に抱きしめる。N、と囁かれ少しだけと呟けば、雨粒は既に消え去りやはり狐の嫁入りだったかと僕は薄っすら目を細め空を見上げた。



狐の嫁入りの中の嘘

(2010.9.26〜30)


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -