手にしたボールから伝わるのは、彼が好きだというキモチばかり。苦しい、痛い、辛い、悲しい。そんな今まで見てきた、感じてきたものは一つもない。何故そんなに彼が、視線を向けると一瞬不安そうに此方を見つめる黒い瞳があった。彼は名の通り瞳に黒を秘めていて、何にも染まらない姿勢が見える。ああ、僕にもそんな名を付けてくれるような人が居れば、そこまで考えてボールに触れるのをやめ、彼の手元にそれを返す。腰元に慌ててボールをつける彼はちらりとまた不安げに僕を見る。



「…N、あの、」

「…幸せそうだ、君のポケモンは」



僕が見てきた子たちとは大違い。出そうになった言葉を飲み込み、じゃあねと足早に彼の元を去る。…ボールからは温かい想いが伝わってきた。“あなたも、ぶらっくがすきだろう?”見透かすような目。たしかあのポケモンは、最初の頃からずっと手元に居たポケモンだ。それも1匹だけじゃなく、2匹3匹。彼は、手に入れたポケモンをずっとああして慈しんでるのだろうか。この世界にはそんな奴が、ちゃんといるんだろうか。彼を見てると分からなくなる、分からなくなるから――答えを教えて欲しくて、僕はまた彼に会いたくなるんだ。



対極的な僕達

(2010.09.23〜25)



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