数式は美しくまた嘘をつくこともなければ歪められる事もないと彼は言う。俺は正直数字はあまり好きじゃない。昔から式を解くのが遅かったし、難しいものなんてちんぷんかんぷんだ。その点ホワイトは数字は面白いと昔言っていたから、彼の言う言葉が分かるかもしれない。俺としてはどちらかといえば文章や言葉の方が好きだ。うそに塗れることもあるし、真実を語ることもある。文字をなぞる行動が好きだし、言葉に隠された裏側を探るのだって好きだ。ただ人間同士のコミニュケーションや、腹の探り合いというのはどうにも苦手だけれど。―そんな訳で俺には彼の言葉は半分も理解できないし、したくもない。だって数式が美しく、はまあ答えを出したときは爽快感があるけれど、嘘をつかない、歪められないというのはそれは裏を返せば、人は嘘をつき歪むということだ。彼は人に何を求めているのだろう、赤ん坊のような純粋さ?ポケモンのような無垢さ?無理だろう、人間は嘘をつくことを必要としているし、時には真実を歪める必要だって知っている。それらを全て失くせば正直者だけの世界となり、それは更に酷く醜い世界になるのではないだろうか。「お前が嫌いだ、*ねばいいのに」「あの人って*なくなっても構わないよね」そんな人間のどろりとした感情が素直に吐き出されたら、世の中殺し合いだけの世界にしかならないはずだ。純粋になにかを愛し、素直に吐き出すのだけが良いとは限らないわけで。ポケモンが束縛されず、苦しまない世界を求めそして人に素直さを求め穢れをはらって欲しいと願う彼は、案外逆に世界撲滅運動をしてるんじゃないだろうか。



「N、」

「―何だい、ブラック」

「普通とやっぱり、違うな」



ぼそりと吐き出した言葉にNは、ただ笑った。



それが確かに綺麗なのですか

(その笑いはとても綺麗だから、僕は彼の笑みを壊したくなくてただそれを見つめた)



10.09.24


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