なんて面倒くさくて汚い世界に生まれ、“最強トレーナー”として存在してしまっているのだろう。僕は別に単純に他の子同様ポケモンと一緒に旅をして、ただ精神的に大きくなって母の元へ帰れればそれでよかった。そのうちいい人でも見つかれば結婚でもして、子供にトレーナーはよかったと笑って話し、ポケモンを与えたら大事にするよう教えを説きたかった。それだけなのに、純粋な存在がある世界は面倒くささと汚さも比例していると始めて知った。どうせゲームや漫画、テレビの世界にいけたとしたって、同じように綺麗さと汚さは同率を保ち存在するんだろう。ならばせめてそれらとは多少なりとも無縁の子供であり、大人になってから世界で生きていくのは疲れると知りたかった。最強トレーナーだって別になりたかったわけじゃない、単に傷つくポケモンを見捨てられなかったし、自分と縁を持ってしまった存在を断ち切りたくて足掻いた。その結果コレだ。人間は誰もが僕をヒーローのように見てくるし、幼馴染だってそうだ。お前は凄い、俺では無理だったという視線を、僅かに無意識にでも含んでこちらを見てくる。うざい、面倒くさい。誰が最強トレーナーになりたいといった?誰が世界を救いたいといった?僕が救いたかったのは、僕自身。そして、大事なポケモン。面倒くさいことを押し付けてくる世界も人も助けるつもりなんてなかったといえば、僕は殴られるだろうか。罵られるだろうか。無理だろう、結果的に人々は多少なりとも救われ今平和に生きてるらしいし、僕は“誰も勝てない”存在らしいから。――ああそれはつまり人々にとって神に等しき存在で僕はただの子供で他の子のような生きる道を選ぶことを許されなくなってしまっただけではないか。なんて嫌な世界だろう、どうせならロケット団が悪の頂点としてそのまま、…そうしたら僕はポケモンを慈しむことが出来なくなる。ならばこんな世界でも僕が頂点に君臨している方がマシなのだろう。たとえ僕の心が死のうと、僕が人を拒絶しようと、なんだろうと。



誰か開放してくれないだろうか。どうせなら一度でいい、輝きを持つ、純粋にポケモンを信じる人を好きになってみたかった。どうせなら一度でいい、英雄的崇めなどいらないから、単に普通の   として存在させてくれればよかった。ねえ世界を知った僕はこれからどうすればいい?唯迷い、苦しむから僕はいつまでたっても、このシロガネ山から出られない。



英雄が英雄を求める

(そしてもう直ぐ金色の瞳をもった存在を、僕は目にする)



10.09.23


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