(幼少期黒白の話で白独白。歪み系列の話)



小さい頃何故だか夜の道を歩くのが怖かった。家々の明かりがあってそれなりに視界は開けているというのに、暗い空や家と家の間の闇が恐ろしくて仕方がなかった。小さい頃母に読み聞かせられた絵本の一つに、暗闇にはゴーストポケモンがいて貴方をいつでも待ち構えている、なんてものがあった。その影響かもしれない。闇の中には死んだ人間がその後魂となって変化したといわれるポケモンや、人を死者の世界へいざなうようなポケモンが居ると思うとどうしても恐れしかなくて。母がどうしても家を空けるとき、ブラックの手を握って泣いて駄々をこねたほどだ。お願いだから二人だけにしないで。家の中にだって怖い場所は沢山ある。ブラックは困った顔をして、必死に私の頭を撫でたものだけれど彼の手も震えていて同じように怖がっていたのが分かったから、私は余計に泣いてしまった。そのせいで母は何度も諦めた顔をし、ライブキャスターを起動させて必死で何度も謝っていたこともある。画面に映ったのはしわくちゃの顔をしたおばあさんで、それをみて私とブラックは気絶しかけたこともあった。大きくなって聴いて見れば、母の母、つまり私たちの祖母が母を夜に呼びつけていたらしいのだけど、来ない事に怒っていてそれを母は必死で謝っていたらしい。幼い子供が居ようとお前は私の言うことを聴かなければならないはずだ。そう母を怒鳴りつけた声が、今でも耳に残って離れない。母は実家のことなど話さないから、何故祖母が夜に母を呼びつけあんなにこないことを怒鳴りつけたのかなんて、知らないけれど。大きくなった今は夜のゴーストポケモンは暗闇を怖がる子供の遊び相手になれることを知っているし、闇を怖がることなんてない。むしろ夜のほうが落ち着いていられることのほうが多い。昼のほうが怖くて仕方がないのだ。夜は、ポケモンも人も、静かに居られるから落ち着くけれど、昼間は沢山の音が聞こえて、恐ろしくなる。あんなに恐ろしかった夜は、私にとって安定をもたらしてくれる、安らぎの時間となった。



「人は成長と共に変わるのね」



良くも悪くも、昔のままでは居られない。知っている事実を口にして、私はそっと目を閉じた。



恐ろしかった夜は今、

(寝るのは怖い。でも一番怖いのは朝目が覚めたときだ)



10.10.22


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -