(性格自体はスペ金。設定ゲーム)



赤い瞳のあの人が居るという山の入り口に立って、もう10分は経過するだろう。ポケセンから出てきて軽く伸びをする、いつもポケモンを癒してくれる女性(名前、聞いた気するけど、なんだったか忘れた俺って最低だろうか)が此方に気付きぎょっとした顔をする。そりゃ10分前にポケモンの体調整えて、手元にある薬の在庫チェックして、雪山だからと寒さ対策もして行って来ますといった俺が此処に居るんだから驚くだろう。どうしたの、都合でも悪くなった?そう尋ねてきた彼女に「いや、ここ入るの、なんか時間掛かるんですよ」と苦笑いする。あの最強と謳われしトレーナーが存在する山。山自体がそもそも異様な重圧感があって、正直元から入りにくくてしょうがない。でも此処には赤い瞳が由来なのか、赤い名前を持つ人が居る。彼は何を見て此処に篭ることを決めたのだろう。彼はどれほどの強さを持つのだろう。狭き世界、けれど子供からしたら十分立派な世界たるカントーとジョウトを制覇してしまった今、彼に興味があって仕方がない。いや違うかもしれない。興味というより、彼は果たして未来の自分なのかどうか確認したいのだ。いつか、彼のようになるのだろうか。まるで彼は人を拒絶するよう山に入ったというじゃないか。全てを倒し、チャンピオンにだってなって辞退して、幼馴染の声も空しく消えていった“最強トレーナーレッド”。なんだか今の自分に瓜二つだ。まさか彼は既に死んでいて自分はその生まれ変わりなんてもんじゃないよな。いや彼は生きてるはずだ、一部で、目撃情報を血眼になって探して、手に入れた。本当に、たまに―らしいが、膨大な金を差し出し薬や食料などを購入するようだ。幼馴染の差しいれは全て拒絶してるらしいし、自分の手で触れて購入したものじゃないと駄目らしい。



「…人間嫌いの頑固じいさんかよ」



わーお、未来のおっれーじゃん。なんてへっと笑えば肩が凝ったと軽く揉み解す。嗚呼何時まで此処にいたって仕方がない。バトルして彼が“語る”話でも聞こうではないか。本人が口から語らずとも、勝負をすればポケモンが、指示をするトレーナーが物言わずとも全てを語る。何で語るか?トレーナーなら分かるんだから言わせんな。俺は背筋を軽く伸ばし屈伸運動すれば腰元のボールに収まるバクフーンににっと笑いかける。寒いらしいしおめーの力、はんぱなく借りるかもしれねぇけどいいか?言葉のないその問いかけに、彼はがたがたっとボールを揺らして答えた。



確認作業に入ります

(見てきた世界はまるでゲームや漫画のような、現実味のないものとは違った。血なまぐさくて、ただの欲望渦巻く汚いものだった)



10.09.23


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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