(学パロでN黒前提白+N。Nさんがちょっと最低。白によるバイオレンス表現有りなので要注意。若干の性描写も含みます)



見た瞬間頭が真っ白になった、というより何もかもがわからなくなった。肩からさげていた鞄が落ちそうになり慌てて手で押さえれば、切れ長の彼の瞳が夕日を帯びて光りこちらを見る。白い頬は赤い光でいつもより血色がよくて、でもそれだけでないことを私は知っている。乱れたシャツははだけていていつもきっちりされたネクタイが見当たらない。ついでに首元には汗が浮かんでいて、美しい緑の髪は夕日で輝きくしゃりとだれているのが分かる。ズボンのジッパーはあけられたままで、彼はこちらを見てかすかに笑えばじじ、と静かにそれを上げてぷちぷちと適当に胸元のボタンをしめて此方へやってきて、そっと扉から隙間を覗き込むように見ている私の唇を撫でた。



「…お楽しみを、邪魔はしないよね?ホワイト」

「っ……」

「ブラックを傷つけたくないんだよ、ボクは。だから、そう。これは合理的なんだ。“あの子”はボクに抱かれたがっていた、ボクはブラックを傷つけたくない、欲を満たすのにはちょうどいい相手…ただ、それだけ」

「あ、んた……自分が、何してるか…わかってんの…?」

「分かってるよ。僕はこれが最善だと考えている。欲に駆られて負担を掛けたくはない、男同士っていうのはね、何かと準備も必要だしそうやすやすとセックスなんかできないんだから。女はその点、妊娠にさえ気をつけて、欲をぶちまければお互い満たされて終わり。もともと愛のないものなんだから、楽なものだよ」

「……最低。ブラックがそんなの、許すと思う?うれしいと思う?…穢い、汚らわしい」

「―じゃあ言うけど。僕は“君”でも構わなかったんだよ」



ブラックに良く似た顔、瞳。中々悪くない体。気丈なそれを崩すには、それが一番面白くて、いいんだから。笑うコイツに背筋がぞわりとして、私は唇を撫でたNの手に爪を立てて引っかいてやる。ざまぁみろ。白いシーツに包まり眠る少女を起こさぬよう、私はそっと背を向けて歩き出す。Nがまるで水でも飲みに行くかのような軽い足取りで後を追いかけてきて、玄関で手首をつかまれる。



「ブラックはボクが彼を思ってこうして欲を発散させるのと、君をつかって発散させるの、どちらがいいかと問われたら、きっと前者だと答えるよ」

「知らないわよ、何がブラックを傷つけたくないから、だ。あたしでもよかった?どんな女でもいいんでしょ、あんたがブラックじゃなくてほかの奴と寝るのは、単にブラックに穢れた自分を見られたくないから。ブラックがアンタとのセックスを嫌がってるわけじゃないのは知ってる。なしでも構わないっていってるし。アンタは単に欲をもってそれを発散させるのにブラックを使うという「汚れ」を知られるのが嫌なだけ、だって崇拝してるもんね?純粋無垢だって、ブラックを。性欲なんてさもないように思ってるし、だから―」

「…知ったような口を聞かないで欲しいな」



がり、と。シャツの隙間からのぞく首元をかじられ、痛みを感じて私はNを突き飛ばす。何よ、ブラックが最近Nとの仲があまりよくないって悩んでるから、ちょっとひとつ言いに来てやったら――――よりにもよって女とセックスした現場を目撃するなんて。



「…アンタなんかにブラックを明け渡すんじゃなかった。死ね、クソ緑頭」

「口が悪いね、ホワイトは」

「知らない。ブラックには黙っててあげる、だから――――ブラックの前から消えてよ」



最低、最低。手を伸ばしてきたあいつの手を叩き、Nの胸元に拳を叩きつけてやれば私は顔を背けて飛び出す。ブラックがNを好きになって、側に居たいって言ったから、私はそれを認めて許した。その結末がこれか。神様アンタ悪い奴ね。ああ虫唾が走る。女の善がる声、疲れてかすれた声が次第に消えていって、寝かしつけた女から視線を背けてこっちをみて笑ったNの顔、あいつの白い背中にできた、紅い爪あと。シーツから見えた女の足は微かに白いもので汚れてて、すらりとした足だった。ブラックはもう少し男の子らしい感じだったけれど、くるぶしからの部分がよく似ていたかもしれない。短い髪の女の後姿も、どこかブラックを彷彿とさせた。それが全て嫌で仕方がない。ブラックに重ねてるくらいなら、抱けばいいのに。負担が何?傷つけたくない?それは単に欲望で動いて汚れた自分を見られたくないからでしょう。保身のためのくせして。



「次別の女連れ込んでやってたら、噛み殺す」



首もとのかまれた痕が傷む。そっと制服のシャツから首元を撫でれば、顔が歪む。ブラックの心の痛みはこれ以上だ。N、覚悟しとけよ。私は優しくアンタに抱かれる女の噛み具合と違って、抉るように噛んでやるから。その痛みで思い知れ、きっと全部知ってもブラックはアンタを受け入れちゃうんだから。――――羨ましくなんかない、私にはどんなに願ってもあの子が受け入れて振り向いてくれることなんて、ないんだから。



激しい嫉妬の噛み痕を

(彼を食い殺す狼にすら、女―あたし―はなれる)



10.10.13


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