(確認作業系列。赤と金の絶望者の賭けの続き)



俺はレッドさんからよく分からないことを言われて、時々来るよう言われた。え、なんで来なきゃいけないわけ?そう思うも「僕が来てほしいから」とさらりと返されて俺はどうすることもできず「はあ、」とあいまいに返事をするしかない。ていうか此処に定期的に来なきゃならないってことは、あのくそ長い山道登ってきてポケモンと格闘してがんばらないといけないわけ?さすがに空飛んで此処へは来れない。だって雪だし一面真っ白なわけだし、なだれとか起きたら困るわけだし。さすがにそれは大変なんですけど、そう言うと「じゃあ必要な荷物取ってきてしばらく此処に住んで」そういわれて俺はますます意味が分からなくてぽかんとなる。



「…は、…え?」

「此処は何もない世界だ。真っ白い頭になれる。君を純白に戻すには、ふさわしいよ」

「…俺を純白にって、あれッスか、俺を、純粋な子供にしたい、って?無理、無理だろ。アンタがずっとここに居てそんな目を今もしてるんだ。アンタが純粋な存在に戻れてないのに、なんで俺が、」

「僕は戻りたいとは思わないよ。どうせもう無理だ。僕は歳を重ねてしまった。大人になりつつあるんだ。…でも君はまだ大丈夫、それに僕は君に僕を救ってもらいたい。これは僕のわがまま、君に付き合う権利はないけれど、さて―最強トレーナーが君如き“子供”に救われる様は滑稽だよ、何よりも面白い喜劇で何よりも下らないものだろう。君はそれを、見てみないか?」

「……。興味、ない」

「そう。じゃあ僕は実力行使をしなければならないね」



無表情に言い放った目の前の人は俺に近づくと顔をがっと掴んでくる。うわ、冷たい手。なのになんでこんなに力があるんだよ。ぎりぎり掴まれて痛い。やべぇ、何この人ポケモンだけじゃなくて力も強いってわけ?



「君は、最強者を“弄んだ”んだよ。その償いはしなければならない。君は今までどれくらい人を責めた?罪だと言った?君は僕の安らぎの中に自らの身勝手で踏み込んできたんだ。ならばその償いに僕は要求するよ、君は僕を救わなければならない。それが代償だ。君が身勝手をしたなら僕だって身勝手なことをすることを許されるはずだ」

「っ、あんた、狂ってる、よ!」

「それは君もだろう?」



両手でレッドさんの手をつかんで離せば、この人は笑っていた。美しく、静かに唇を歪ませて、笑っていた。俺の背筋がぞくりとしたのが分かる。体が震える。俺はとんでもない人に、手をつけてしまった。パンドラの箱を――開けてしまったのだ。



「ゴールド、」



掴んでいた手は何時の間にか離され、俺の手は彼に逆に掴まれてぐいっと引かれる。そして耳元でささやかれるは、



確かめてあげる

(僕が君の、君が僕の英雄に…なれるかどうか)



10.10.08


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