確認作業に入ります系列の話。きついコトネちゃんと、ある人たちの話)(HGSS設定だけど確認系列のため主人公は金)



―頂点に君臨することを目指す人はきっとその先にある重圧や、耐え難い苦痛を知らないから、頂点に君臨したいと言えるんだと思う。私には一人、大事な人が居ます。その人はお兄ちゃんみたいな人で、私にとって兄も同然です。そのおにいちゃんは、旅に出て、その「頂点」に君臨してしまいました。掛かってきた連絡で伝えられたそれに私は歓喜の声を上げた、でもすぐに後悔した。



『――コトネ。…結局、何も、なかった』

「―え?」



頂点なんて、疲れるだけ。何も、何も、ないんだ。

泣きそうな声。ねえ、どうしたの、何があったの。問いかけたくても、もうぶつりと切られてしまって、私は連絡が出来なくなってしまった。なんどかけてもお兄ちゃんが出てはくれない。凄く恐かった、お兄ちゃんがばらばらになるんじゃないかって。でも、その心配は少しだけ和らいだ。お兄ちゃんから一つ連絡があって、カントーで、またジムにチャレンジする、と。強い人に出会って、最初に戻りたい。その願いだけを抱えてお兄ちゃんは次々ジムリーダーを倒していきました。…そしてふらふらあちこちへいって何かを調べて、そして最後のジムリーダーの元を訪れて消息不明。お兄ちゃんは、頂点に君臨したことにより何もないことを知り、英雄になったことで知りたくもなかった裏側を知って、疲れてしまった。



なら、帰ってきて、ひっそり暮らそうよ。名前を変えるなら、私もそうする。お兄ちゃんが生きやすいように、私も協力する。過去を捨てたいならそうしてくれてよかった、私との全ても要らなかったなら、そうしてよかったのに。消えたままのお兄ちゃん。あんなに祭り上げていたくせに、チャンピオンを辞退しカントー最後のジムリーダーたる最強者を倒した「英雄」はどこかに消えたと、それだけを誰もが囁きそしていつのまにかそれすら消えた。お兄ちゃんは、本当に―何もなくなってしまった。あるのは、きっと今も何処かで寄り添うポケモンだけだろうね。



「…お兄ちゃんを、ゴールドを返してよ」



私の兄のような人だった、優しくて強いゴールド。彼の瞳の金色は、光を放つ事はなくなって。私はもう彼の金色を見ることすら、叶わない。彼を消したのは誰?彼から全てを奪ったのは、誰?答えは簡単。



「あなたたちが、…消したんだ」



だん!と。強く手元の鏡に拳をたたきつける。ゴールド君が消える数週間前に、僕の元へ来たとき渡すよういわれたものだ。そうして出された手鏡。こんなの要らない。私が欲しいのは、私を妹のように思ってくれて、優しく笑ってくれた、ゴールドなんだよ。



「伝説も英雄も頂点も何も意味ないじゃない!!昔もそうして“少年”が一人消えた!これで二人目!世界は人を消して、何になるわけ、何もないじゃない、ないくせに、なんでそうやって―――!」



叫んだ瞬間私は空しくなって口を閉ざす。…無駄なのを分かっていても、この思いだけはどうしようもない。ああ、目の前のこの人たちだってこんなことを望んでいたわけじゃないのにね。分かっているのに。…こんなにも世界が憎くて仕方がない。鏡を割った事で切れた手から滴り落ちる赤い血。それすら、私にとって――ただの赤い色のついた水にしか見えない。意味なんてないんだ、こんなものに。…意味があるのはあの金色だけなのよ。



私にとって意味のない色

(どんどん溢れていく。気付けば私は色のない水を瞳から流していた)



10.10.03


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テーマ「人外ファンタジー」
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