(今更遊園地ネタ。のほほんとした三人の奇妙な仲良しぶり)



遊園地に行きたい。お昼を一緒にしていたNがそんなことをぽつりと漏らしたものだから、私はは?と箸を止めて隣で食事をする彼を見る。正面にいるブラックも思考停止したらしく、手元が止まりNの顔を凝視してる。そもそも三人でこうやってご飯を(穏やかに)食べてるのが珍しいのに、更にその上を行く珍妙さを彼は行った。何、遊園地って、あの遊園地?小さい頃、父さんが休みのとき連れて行ってもらった、ライモンシティの遊園地。イッシュで遊園地っていったらあそこしかないし、旅で一度寄った遊園地は、昔と変わらなかった。そう、あの遊園地だよ。お味噌汁を啜るNは飄々とした顔で(て、いうか。あんたって、お洒落な洋食派かと思ったら和食派なのね、)言うものだから、ブラックは暫く考えて「Nが行きたいなら」とあっさり了承してしまった。まって、何、遊園地って、私達皆で行くの?



「…?一人二人で行ってもしょうがないじゃないか」

「今更三人バラバラってのも、それはそれで変じゃ、ない?ホワイト」

「そ――――――…う、なの…かな。…え、一緒じゃない方が、おか、しい?」

「「可笑しい」」



あっさり二人に言われて私は内心ええええって思うけど、いえない。そもそも出会うとぴりぴりするNとブラックが一緒とはいえ一緒にご飯食べてて(そりゃ、私が彼の食生活心配したりして、美味しい食事のとれる場所を紹介したり、お菓子薦めてみたりはあるけど、)、それだけでもチェレンやベルからしたら奇妙な光景だろうに、遊園地にブラックとNと三人で行くなんて、…凄く違和感っていうか。別に三人一緒が嫌とかじゃないんだけど、なんていうか…違う気がする。私はNが嫌いだし、Nも私が好きじゃないし、怖がってるし。なのに一緒なんて、ブラックが窮屈になるだけじゃ、ないの。



「…ホワイト、」

「っ、」

「僕が嫌なら、無理にとは言わないよ」

「ち、が!…あんたのこと嫌いだけど、そうじゃ、なくて…私が居たら、…窮屈じゃ、ない?」

「窮屈?そうだとしたら僕は黙って一緒にこうやって食事したり、君からの申し出を受けたりなんかしないよ。ブラックなら喜んで受けるけど、心の底から嫌いな相手のことなんて、知らないさ」



ごちそうさま、と箸を置くN。それ、なに。つまり、心底嫌いではないって、こと?あ、止めてそういうの。ちょっとなんかブラックが嬉しそうじゃない。ていうか、ブラックなら喜んでとか、ちょっと、ブラックはあんたの何!何なわけ!まさか何の何じゃないでしょうね!……話がそれた。…まあブラックが嬉しそうだし、Nは構わないみたいだし(ていうか最初から私が一緒なの前提だったし)、私は食べていたサンドイッチの最後の一切れを口に運べば、ぼそりと「…行くわよ」と答えた。…ああ、ブラックが嬉しそうにニコニコしちゃってる。よかったね、N、なんて笑いかけてる。Nがそれまた嬉しそうな顔して……もう、…二人で行けばいいのに。男二人じゃ浮くか、いや、二人ならそんなの別に気にしなさそうだけど、…一人ってのも嫌だし、やっぱやめやめこんなこと考えるの。華になってやればいいんだから、そうでしょ。



ご飯を食べてお会計して、私はボールからケンホロウを取り出す。てかNはどうするんだろう、と思ったらなんかブラックがN専用のケンホロウゲットしてたみたい。え、何?違うの?…あ、なんかNのお運びトモダチみたい。…なんか違和感感じるけどまあNとブラックだし。ていうかなんだろう、二人が熟年夫婦………なし、だめ、私可笑しくなる。はいこの言葉は消去消去!私は頭を横に振ればケンホロウに乗っかって、お先にと二人を置いて遊園地へ向かった。







「遊園地はいいね、やっぱり。特にこの観覧車、数式的に―」

「N、それ、やめて。俺、頭混乱するから」

「あ、ごめん。…ん、向こうにマメパトの大群が見える」

「ホントだ。なんか、誰かの手持ちっぽい、ね。…マメパトってのほほんとした顔してるよね」

「ブラックもぽやっとしてたりすると思うけど――……ホワイト?」

「…え?あ、…何?」



ぼんやり観覧車の外を見ていたら、黙っている私にNが声をかける。…なんかやっぱり違和感。なんで私、嫌いなやつと大好きな片割れと三人で仲良く観覧車乗ってるんだろう。これ不思議じゃない?私だけ?



「…激しく君だけだとおもうよ。ねえブラック」

「そう、だね。うん、別に俺は、違和感なんか、ないし」

「…あ、そう」



なんか、聞いても無駄っぽい。ぐるぐる回る観覧車の中で二人は楽しげに会話する。別に加わりたいわけじゃないからいいけど―…まあ、たまにはこんなのほほんもいいかもしれない。個人的に違和感はあっても、この空気は、嫌いじゃないから。それに、ブラックとNがお互い楽しそうに笑ってる顔は好きだし、それを見れるこの位置は、中々悪くないから。私はNが、嫌い。ブラックが、大好き。でも、三人一緒に居る事が嫌いじゃないから、不思議―。



三人一緒が、心地イイのは何故でしょう

(て、ちょっとまて。N、ブラックの太ももに置いたその手は何!?)(…あ、ホワイトも触って欲しい?)(ふざけるなああああ!)(二人とも楽しそうで、よかった)(私の心配を気付きなさいよブラック!!)



10.10.02


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テーマ「人外ファンタジー」
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