予感はあった。強い意志を感じる瞳は、何にも染まらない色をしていたから。僕は彼に負けても、勝っても。ただそれらを受け止め見つめるだろう瞳があることを知っていたから、どうなろうときっと彼は僕を見てくれるはずだと、思った。だから彼が勝つだろう未来がちらちら見えて予感がしていても、僕は恐れることはなかった。僕の理想たる全てが叶わなくても、彼のようなトレーナーや人々がこの世の中には居る事を知ったから。ハルモニアの血を受け継ぐ王となった者がそんなことを考えているとは、僕を使っていたゲーチスや七賢人は、思いもよらぬ事だろう。別にいい、どうだって、いいんだ。彼のあの瞳が揺るがないならば――それでいい。
「ブラック、…君に出会えてよかった」
あの城にて待つよ。囁くよう言えば、彼は唇をかみ締める。ああ、傷ついてしまうよ―それは、嫌だ。そっと唇を指先でなぞり、掠めるよう彼の唇に己の唇を一瞬触れさせれば、最後を迎えようと、背を向けて歩き出す。僕と君が出会ったのは運命だったのかもしれない。世界の統一と、穢れのない透明感を求める僕。正義も悪も線引きをしない、何にも染まらない彼。交差した運命はもう直ぐ、止まる。ブラック、僕は君に出会えて本当に良かった。君を好きになって―――よかった。
「、…N…」
俺も、出会えてよかったよ。
投げかけられた言葉は胸を貫き、僕は彼との最後を思い描き―また一歩階段を上った。
出会えた運命に感謝する
(交差した運命、透明と黒、それらは全て僕達を示していた)
10.10.02