(旅中のNと、ある女性の話)



常に僕が見てきたポケモンは傷つき人を怖がり、何故自分がこんな仕打ちをと嘆いていた。だから幸せそうなポケモンを見たとき、あまりの衝撃に頭を殴られたような気分になった。ポケモンは人と信頼関係が結べるのか?人は人を傷つけるのに、ポケモンに優しさを向けられるのか?ブラックとホワイトの手元にいるポケモンは、常に主人に慈しみの目を向けている。触れるとこの人たちと話をしなさい、とまるで母に諭されるように言われる。だから僕は、あの二人を見かけたらつい声をかけてしまう。お陰で最初の頃より多少なりとも関係を築き(ホワイトとは、ぴりぴりはしているけれど)時々僕の栄養管理について心配されて一緒に食事を取ったりもするようになった。稀にホワイトの気分で、ポケモンマッサージを行う人の下に連れて行かれて彼女のポケモンを触れることは許されずとも見守ったりする。ブラックにいたっては疲れがたまると僕がポケモンたちを見て、彼は安らかに眠る。中々、悪くない。そう思うと同時に時々傷ついたポケモンを見かけるとどうしても人間に憎悪が湧いてくる。どうしたらいいんだろうか、僕はポケモンが幸せになれることを知ってしまった。けれど多くのポケモンが傷ついているのも事実だ。果たして、僕が選ぶべき未来は一体。そんなことを考えて街に設置されたベンチに座り息を吐き出すと、ふとすぐ隣のベンチにいつのまにか女性が座っているのに気付く。―僕が来たとき彼女は居ただろうか、いや誰も居なかったはずだけど、



「お悩みの溜息ね、若いうちは沢山悩むの。人生の糧になるわ」

「……は?」

「そうねぇ、貴方は大分特殊な人間に分類されるだろうから、ちょっと通常の思考を取り戻すのに“トモダチ”と普通に遊んでみるのがいいわ」

「…あの」

「貴方の迷いの答えはトモダチが持ってる。友達と、トモダチが必ず持ってるわ。それを見て自分の信念を突き通してしまうのだっていい、考えを変えたっていい、それは貴方の自由よ。強い人は、迷って答えを見つけるものなの」



にっこり。そう笑った女性に僕はどう答えていいか迷い、俯き暫く考え、「あの、貴方は一体」と尋ねようとしたとき。―そこにはもう誰も居なかった。「あ、れ」何度もあたりを見るが誰も居ない。まさか白昼夢?いつから寝ていた?そもそもあの人、まるで僕の全てを知るみたいに、そう考えると側を通りかかったらしいブラックとホワイトの双子があ、とこちらを見た。



「N、」

「…げ…」

「ブラック、ホワイト」

「一人で何、やってる、の?」

「あ、いや、人をちょっと探してるんだ。女性なんだけど、」

「女性なんてこの世に五万と居るわよ」



ぼそりとホワイトの辛辣な言葉にブラックが苦笑いすれば、特徴は?と尋ねられ気付く。――あれ、あの人どんな人だったっけ。



それは真昼間の不思議な出来事

(髪色…黒?茶髪…?服、なんだったかな。顔や声は覚えがあるんだ、なんとなく。…そう、ブラックとホワイトを足して2で割ったような、)



10.09.29


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