英雄が英雄を求めるの続きで交わる赤と金の瞳の赤視点)



彼のポケモンは強かった。いや、強い。強く、そしてお互いを信頼し合い大切な仲間なのだ。特に彼の相棒らしい、炎を纏いしポケモン。ジョウトにしか生息しないのか、それともカントーにもいるのか、それについては生憎僕はもう既に古いポケモン情報しか頭にないからそろそろ新しいポケモンについてだけでも、情報を仕入れなければ。その見たことのないポケモンは、彼が多分初めて旅に出たときから一緒のパートナーなのだろう。一番レベルも高く、そして強くて。信頼関係も一番築かれた相手に見えた。何せ他のポケモンには何かと指示をしていたけれど、彼はそのポケモンが相手だと視線で語り合い、必要最低限の指示しかしなかった。僕のピカチューの攻撃を避けるよう指示をした彼はちらりと自分を見たパートナー…たしか、バクフーン、といっていたと思う、そのポケモンに静かに笑いかけ、かえんほうしゃ、と技の名をただ呟いた。やけどを負った僕のピカチュー。ああ、強い。確かな信頼関係の下の彼らの連携は崩れない。お互いをもっと前に進むための強さだ。僕と、僕のポケモンの絆は僕の脆く崩れた精神を守るための、いわば守りの関係になっている。だから純粋なそれらが羨ましくもあり、彼がまだ絶望の底にはいないと思わせた面だった。ピカチューの攻撃にどすんと雪の中に倒れたバクフーンをみて、金色の瞳をした彼はそっと目を細めた。そして少しだけ、何かを考えれば静かにその淡い桃の唇を開く。寒いこの中で、彼は温かさを身に纏っている。



「―有り難う御座いました、帰ります」



静かな響きをもった声。何かを確かめ答えを見つけたような顔。けれど、僕はその顔を見た瞬間分かった。そして彼が僕に「勝ちに来た」訳ではない事も理解した。ああ彼は、そうか。僕を見て、自分の絶望の度合いを確かめたのだ。…成る程、君も随分歪んでしまったね。綺麗な金色の瞳は、思ったよりも曇っているらしい。そんな、まさかね。隠れた「僕」を態々探して、絶望の具合を調べるなんて。君はもう、僕以上に歪んでるよ。そんな行動力があることこそが僕以上の証拠だ。僕には自分以上の歪みの人間を探す気力なんてない。あるのはただどうしようもないと悲劇に酔いしれ、佇むだけの、カラダだけ。



目元を撫でて囁いた瞬間金色の瞳が見開かれる。―綺麗なのに、彼は残念なことに歪んでいる。同志に会えたというのに、それは悲しい。君はもう純粋にポケモンを愛していくことだけで生きる事は出来ないのだろうか。金色のその瞳を見たとき僕は微かに期待した。信頼関係を見て僕は羨ましく思った。なのに君の全ての行動を理解した瞬間再び絶望に突き落とされた。君は僕の英雄にはなってくれないのだろうか。傷の舐めあいでもすればいいのか?それともこのまま絶望のままにいればいいのか。揺れる金色は僕のように迷っている。どうしたらいいか分からないし、どうしようもないと叫んでる。迷子は二人、世界は誰も助けてくれない。



「―君の名前は?」

「…ゴー、ルド…」

「そう…ゴールド。…瞳の色とおなじ名前」



僕と一緒だ。そう呟けば、「じゃあ、レッド、さん?」と微かに彼が薄く口を開き尋ねる。こくりと頷けば、ああそうですか、もういいでしょう、離して下さい―そう金色に拒まれる。でも、だめ。助けてくれないことを再び知り、期待したそれは裏切られた。僕が勝手に期待したのだから自業自得かもしれないけれど、それにしても。…彼は、あまりに幼い。絶望を知るには、早すぎた。だから、そう。僅かに僕は再び賭ける事にした。金色の少年が僕の英雄にはなれなくても、僕が、絶望者同士彼の英雄になれないかと。



「…ねえ、ゴールド。絶望から、這い上がりたい?」

「――、……別に」

「そう。じゃあ…絶望した英雄が、絶望した君に賭けるのは、…面白いと思わない?」

「…は、……レッドさん、でしたっけ。…ホント、アンタも随分歪んでんな。何、それ。傷の舐めあい?絶望しました、お互い悲しいですね、なんての、俺は要らないんだけど」

「違うよ。そう、だな。これは、僕のためだ。僕は君を見て、君が、君のポケモンと深い絆で結ばれているのをみて、君はまだ、少しだけ絶望から希望の道に、いけるかもしれないと思った。だから、僕は君に掛けてみたい」

「……?意味わかんないんですけど」

「分からなくていいさ、分からないというのは、所詮僕の歪みを理解できるほどの、絶望者ではない証にもなるんだから」



君が望んだものだろう?そう微かに笑った(つもり)ら、アンタが俺をまた絶望に引き摺りこんだくせにと、皮肉られる。―それでいい、そうやって言えるうちはまだ、大丈夫。僕が大丈夫にしてあげるよ、…僕はもう二人目の僕なんて、要らないんだから。



絶望者の賭け

(金色の瞳は、赤い瞳の者の英雄となれるのか、)



10.09.28


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