(視点あるポケモン。ブラックの手持ち、)



私達の主人は、どうやら私達に変わった名前をつけているらしいです。というのも彼の幼馴染や双子の片割れが主人に私達の名を尋ねるたびに、「また遠い遠い異国の神話?」とぼやかれているから。私達は人間の、それも神様の名をつけられているらしい。たとえば、最初から主人と旅をしているポカブだった彼。火の神・カークスという神話の神様の名を授けられている。そして主人を常に空に導くケンホロウへと進化した彼は、アイオロス。このアイオロスという神様なんだか少しややこしいらしく、アネモイ(風の神)たちの主として言及される者の息子のアイオロスから用いたらしい。成る程、神話での言い伝えは色々あるが取り扱う万物、それが風の神のものからなのだから、空を飛び風を抜けていく彼には似合う名だ。最近になって悪戯っ子で人を困らせていたあるポケモンに好かれ、彼のポケモンとなった。たしか名前も再び神様から貰ったはずだが悩んでいて、あれほど大嵐で人を困らせていたというのに飛行タイプということでどうしようか考え、天を司るゼウスという神の名にしたらしいです。なんだか大層な名に思えますが…似合うような、似合わないような。いっそ別の名が一つ候補だったようですが、東の遠い遠い国の神の名だったらしいですが、結局やめたようです。と、ここまで言えば分かりますよね。私もまた神の名を授けられております。その名前が好きですし、主人が何を思い私にその名をつけてくれたのか、分かりませんが―意味を知ったとき嬉しく思いました。調和の女神の名。私はオスですが、その名を誇りに思います。主人の手持ちたる私の仲間は様々な個性を持ち、入れ替わりを繰り返します。その中で私達の中に居るには弱弱しい子も居ますが、そのこが強くなれるまでの番犬が私です。その子の成長を見守り、難しいとき私が出て行きその子に経験を与える。なんだか持たせる道具にそういうものがあるらしいのです。少し前まで私が寧ろそれをつけてたのですが。いえ、主人が最初の風貌から立派になりすぎて逆に落ち込んでいたのであまり顔を出さない方がいいと自分から引っ込んでたんです。でも、よくいるでしょう?赤ん坊の頃は可愛いけれど大人になるといかつくなる!なんて。…私は進化前は大層可愛くはありましたが今ではダンディな風貌だと自負しますが。力も有りますし。アイオロスとカークスの次に長い手持ちなのですからね、主人についてもよく知っているつもりですから。―さてそんな私が持つこの名前、どうやら主人のそばをうろちょろするある人は気になるようです。口にはしていません、彼はその名前を今まで一度も言わなかったし、またそれにたいして何があるとも言いません。ただ私を読み取ったとき、彼が驚いたことがわかりそこから私は知りました。貴方は主人がつけてくれたこの名前が嫌いですか、主人が疲れて街中のベンチで少し横になっているときやってきた彼に私は問いかけました。すると彼は目を伏せ、ボール越しに私を撫でて言いました。



「…嫌いじゃないけれど、複雑だよ。でも、君の主人は…どのトモダチにもいい名前を、与えてるね」



そういった彼の顔は少しだけ悲しそうで、私を撫でた後主人の顔を覗きこみ、眠る主人の頬を撫でて去っていきました。―ああ何だか、彼には翳りがあるようで、無性に私は吼えたくなった。だから、私は主人の安らかな眠りを妨げるのを承知で、勝手にボールから出て吼えました。



同じ名なのに違う

(っ、は…ハル?どう、し……あ…N、)(―ブラック。おはよう、起きたのか。君のトモダチと少し、喋ってたんだけど起こすのは忍びなくてね、)(…いいよ起こしてくれて、…N、俺と、…話そう?)(…うん)(ほらやっぱり、こうして正解です。あの悲しげな顔が、柔らかくなったんだから)



10.09.27


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