確認作業に入りますの前の話)



シロガネ山行って来ます、と挨拶しに来た小僧の目は曇り最後に見たあいつの目に似ていると思った。レッドが居るのか、そう尋ねればさあと弧を描き笑ったあいつは金の目をぎらりと光らせる。何故行くのか、理由を考えれば浮かぶは最強トレーナーに興味があるからか、あるいは倒して頂点に輝くためか。だがコイツはリーグ制覇をしそれをワタルというチャンピオンだった竜使いに返したのだ。頂点には興味はない、あるのは退屈だけだと子供らしくない冷めた声で告げたのを俺は後々「王者」から送られてきた映像で知った。なんという、冷めて絶望した声。崩れた感情。壊れた無の表情。カントー最強といわれるジムリーダーたる俺のもとへ来たときアイツは喜びなんてもてないとはき捨てていたが、此処へくるずっと前から壊れていたのかと思うと顔が歪んでしまう。思い出したあの映像に重なる今の顔をどうにかしたくて、俺は問いかける。シロガネ山へいって、アイツにあって何が分かり何が変わるんだと。何を期待して行くんだ、此処まで来て絶望し続けたお前が、アイツに何を期待できるんだと。彼も絶望し壊れどこかへ去っていった。白銀の世界に身を飛び込ませ消えたアイツはこいつ以上の絶望と闇を抱えて閉じこもっている。あいつの下にあるのは、主人を守るために強くなった、強くなりすぎたポケモンと、裏側を知り尽くし英雄とされ疲れ果てた王者の闇と、白い雪だけだろう。元から濁っていた目は光輝くことなく曇り続け、更なる絶望の者をしり戻ってくる事だろう。行く必要なんてないんじゃ、眉を寄せれば金色の目をしたあいつは皮肉さを含み笑った。



「知りたいのは、俺がその人みたいになるのか否か。ただそれだけです」

「―成れの果てをアイツだと決めてるのか?」

「全ての王者になった者が引っ込んでるってことは、絶望し続けてるから。俺は今その道まっしぐら、未来の俺を確認しにいったって、いいじゃないスか」

「ふざけるな、アイツは見世物じゃねぇよ。それにアイツの元にいったって、お前の“それ”は更に深くなるだけだ」

「―もう十分絶望し尽くしました。何にも興味もない。確認作業の意味は、俺がそうなるか否か、ただそれだけ。絶望が深くなろうが、そんなの興味ない」



切り捨てるゴールドの言葉が意味が分からない。コイツはついに狂ったのか、確認作業?レッドの元にいきアイツがどうなっているのかが、自分の将来の姿かもしれなくて?それをみて自分がなるか否か確認する?アイツは生きた人間でなりたくてああなったわけじゃない、何なんだその事務的作業は、お前も生きた人間だろう?確認作業なんて、そんな言葉を使うな。子供がそんな事を言うべきではない。言いたいことは幾らでもあるというのに目の前の金色は冷たい色をして、アンタに理解してもらうつもりもないとはき捨てた。―俺は初めてあったとき、なんつー目をしたガキだと思った。正義ごっこなんかしてるからだと罵ってやろうと思ったし、レッドの真似事をした二代目だとも思った。子供が絶望しているのは嫌いだ、レッドを思い出すから。そして自分がいかにお子様だったか更に知る事になり、どうしても苦い思いしか出てこない。だから嫌いだ、全てを思い出させて、二人目の絶望の子供を生み出した世の中を嫌いにさせて、絶望から足掻くことをやめ歪み出したコイツが、嫌いだ。同時にコイツも必死になって救おうとしてる俺を嫌うし、馬鹿だと言う。お互い反発しあう。もうどうしようもないほどの深いところにお互い居るというのに、足掻く俺と諦めたコイツ。そして逃げた赤い瞳が、どうしても忘れられない。背を向けたアイツの腕をつかめない俺はただ絶望を更に深める金色が忘れられず、佇んだ。



消え行く金色を見つめて

(必死になれば成る程絶望だけが深まる、何時になればこの螺旋は止まる?)



10.09.25


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