ばりばりぼりぼり。有名定番菓子を食す彼の指は油でてかてかしてる。指先に軽く塩味のそれがついているらしくそれを舌で舐めてまたむしゃむしゃ食す仕事に戻る。たかが芋を薄く切って油で揚げただろうそんなジャンクフードの何が美味しいのか。食べたことがないからというわけじゃない、一応何度か食べては見た(彼と出会ってからそういう品を貰う機会が増えてしまった。主に睨み付けて来る癖にくれる白い名の少女とか双子と幼馴染の二人とか、)。だがあまり美味しいとも思えず、しかしながら癖にはなるから口にしないようにした。だが彼が食べてるのを見るとどうしようもなく身体が欲する。――ああ食べたい。



「ブラック、こっち向いてくれるかい?」

「―?」



指先をちゅぱ、と口に含んだ彼の手を引き、まだ油でてかるそれに唇を寄せて舌で軽く舐める。ひ、と声を漏らす彼が何故だか可笑しくて、僅かに塩みが口に広がり少し食べるのもいいかななんて気にされる。ぐい、とその手を強引に引っ張れば彼の片手から商品名のかかれたまだいくつもの菓子が含まれた袋がばさりと落ちて、彼の視線が床に向けられた瞬間を見計らい油で光る唇を舐めてそのまま口付けた。口内に残る残骸を舌で探り飲めば、彼の口内を掃除するようざら、と口の中を舌で徘徊する。拒否するような彼の舌が押し返そうとするけれど無駄なこと。引いた手をそのままに片手を腰元にやり、抱きこむように口付けしたまま彼を縛り付ければ、彼は諦めたように目を伏せて、ポテトチップスの残骸を「もったいない」と見つめる。ああ物を粗末にするのは、良くなかったね。



「―ごめん」

「……、……いい…」



唇を離し束縛した彼を解き放てば彼は唇を袖で拭い無言でそれらを拾う。食べている途中を邪魔されたのを怒っているのか、それとも食べ物を粗末にしたことか、キスをしたことを怒っているのか。何に怒っているか分からなくて苦笑いする。



美味しそうに見えた、

(仕方ないじゃないか、どんなものより彼の唇や指先が食べたくなったんだ)



10.09.24


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