確認作業に入りますの続き、)



俺のポケモンは俺を信頼しそして強くなってくれた。確かにそれは真実だ。そして彼のポケモンもまた彼に寄り添い彼を守るため強くなったのだろう。しかし強すぎる力は守るべき対象への想いが強すぎて度を越えた場合に起こると俺は思う。最強と呼ばれしトレーナーは死も生もどちらも要らないと拒絶し濁りきった目をし言葉を発することもなくポケモンと意思疎通が出来るかのように音もなく指示をしていく。雪に塗れた雪山だというのに白銀の世界で彼は薄い服装で表情も薄く存在している。まるで絶望しつくしただ毎日ぼんやり生きているかのようだ。そんな彼を守るために、彼のポケモンはコレほどまでに強くなったのだろう。でもきっとそれはこのポケモンたちのキモチと裏腹に彼を苦しめている結果にしかならないだろうけど。ああ俺はまだ彼ほど絶望しつくしていないし、彼らほどポケモンとの深すぎる度を越えた絆もないからまだ引き返せるのかもしれない。いや、俺のポケモンと俺が絆浅しものというわけじゃない。裏側のどす黒く汚れた場面を見てきて俺は俺の子たちを大切し守り慈しまなければと一層深く思いそのための努力を二つも三つも限界より超えてやってきたつもりだ。それに答えてくれた彼らと俺の間には間違いなく、深く信頼しあう絆があるはずだ。彼らの絆がもろい存在を守る者ともろい存在故に疲れ果てた、守り守られの関係ならば。俺たちはお互いに突き進み疲れ果てながらもまだ脚を止められずにいる共同者のはずだ。似ているが故に将来の俺だろうと彼を探しに来たが違ったらしい。お互い深い闇は抱えているけれど俺はまだ彼ほどではないかもしれない。さて彼がどう思うかは知らぬ事だが、とりあえず今は倒れてしまったバクフーンたちをボールに戻して、ポケセンに行かないと。下山するのも大変だ。げんきのかけらも此処へ来るまでに使い果たしたから、ないし。



「―有り難う御座いました、帰ります」



この人には会えて俺とは違ったというのを理解したしもう此処へ来る理由はない。訪れた目的は果たされた。俺は度を超え強くなりすぎ、そして弱いこの人たちにもう会う理由がなくなった。探した日数は膨大だが会ったらはいもう終わりで今までの苦労を思えば苦さが広がるが収穫はあった。俺はこの人ほどではないけれど、でもやっぱりいつか俺もこの人みたいになるのかもしれない、それで十分だ。何度もチャレンジになんかこない、この人を超えてもその先にあるのは唯の絶望だから。悪いがこの人には絶望を感じ続けてもらうしかない。俺は貴方が苦しむ頂点になんか居たくない、背を向けようとした途端、待って、と。静かな声の響きがふぶきの中聞えてきた。



「……、」

「――何スか?」



じっと見つめれば音もなく近づかれ、冷たいと思ったのに温かい白い指先が目元を撫でる。そして彼は呟いた。



交わる赤と金の瞳

(君はもう僕以上の歪みを持ってるね、)



10.09.24


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