[090322]マラスキーノチェリー | ナノ


シロップ漬けのチェリーを一粒、スプーンですくって、喰む。
─あまーい

もひとつ、ぱくり。
─あまくて、おいしい

どうしよう?シロップも舐めたいな。
ううん、飲んでみたい。飲んじゃいたい!

白くて冷たい陶器にそっと口付けると、口いっぱいに甘ーい赤がゾワッと広がる。


あ。

コレ・・・もしかして。
ヤバい、かも?

たぶん こいつは「クロ」だ。


俺達の大好物──甘くて真っ赤なチェリーのシロップ漬け。
アイツがこの容れ物に毒を塗ったんだ。直接盛っちゃったらアイツも食べられないものね。
ちゃんとスプーンで食べてればきっと大丈夫だったのに。俺が瓶をカップのようにしてシロップを飲んでしまう事くらい、アイツには簡単に予想ができてしまうのだ。
だって俺達、双子の王子だもん!


でもね、もし。
俺達ふたりがシロップの海に漂っていたあの頃、もしもどちらかがいなくなっていたら。
どちらかがどちらかに吸収されちゃって、死ぬまで一生ずっと一緒だったんだ。

だからあの時、
一緒に産まれて良かったね。



マラスキーノチェリー
2009/03/22
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