シロップ漬けのチェリーを一粒、スプーンですくって、喰む。
─あまーい
もひとつ、ぱくり。
─あまくて、おいしい
どうしよう?シロップも舐めたいな。
ううん、飲んでみたい。飲んじゃいたい!
白くて冷たい陶器にそっと口付けると、口いっぱいに甘ーい赤がゾワッと広がる。
あ。
コレ・・・もしかして。
ヤバい、かも?
たぶん こいつは「クロ」だ。
俺達の大好物──甘くて真っ赤なチェリーのシロップ漬け。
アイツがこの容れ物に毒を塗ったんだ。直接盛っちゃったらアイツも食べられないものね。
ちゃんとスプーンで食べてればきっと大丈夫だったのに。俺が瓶をカップのようにしてシロップを飲んでしまう事くらい、アイツには簡単に予想ができてしまうのだ。
だって俺達、双子の王子だもん!
でもね、もし。
俺達ふたりがシロップの海に漂っていたあの頃、もしもどちらかがいなくなっていたら。
どちらかがどちらかに吸収されちゃって、死ぬまで一生ずっと一緒だったんだ。
だからあの時、
一緒に産まれて良かったね。