[090515]烙印 | ナノ
※クローム一人称

確かに貴方は此処に在るのに、わたしは其処には行かれない。そして貴方も私の元へは来られない。
だって本当はずっと遠くにいるひとだもの。
(夢の中の貴方はいつもいつでも優しく微笑んでいて、それでもやっぱり遠くのひとでした)

目を醒ます度に味わう絶望と己れの無力さ。
わたしのこの手で貴方に触れたいのに、現実にはいつだって叶わない。
わたしたちは此処から先へは進めない。同じことの繰返し。
ただ、巡るだけ。
(そうやってわたしは何度も何度も恋をする)

柔らかな陽射しに包まれて夢から醒めた、或る日の朝。
今朝の陽射しはまるで貴方みたいにあたたかいねと言ったら、さも可笑しそうに貴方は笑うのでしょう。
そんな夢心地の中でちくり、下腹部の不慣れな痛みと経血とに気付く。嗚呼これが、初めての。
ちくちくじくじくと幸せな痛みがわたしの中に鳴り響く。在る筈のない痛みが生り響く。
(失った筈の子宮が泣いている
貴方に遇いたいと、
貴方に出逢えて嬉しいと、)


わたしの初めては貴方がわたしにくれた初めての、



烙印
2009/05/15
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