春歌はあまり自分の手が好きではないらしい。
小柄な体に不釣合いなくらいには大きくて指も筋肉がついているせいか…女の子らしくない手で恥ずかしい、とすぐに隠してしまう。

恋人である俺の手が彼女のものより小さいことに起因しているのだろう。友達だった頃は平気で手を引いて走ったりしていたのに今は手を触ろうとしただけでびくりと肩をはねさせる…一度、手を繋ごうとして拒否されるように手を引っ込めらてしまったのは小さなトラウマだ。まあそれは、腕を組むきっかけになったから良かったんだろうけど。


でもやっぱ、たまには手を繋ぎたい。指と指を絡めるのは恋人の特権だと思うし、なんか特別って感じがするんだ。


だから寝しなの隙に、少しばかり強引に手をとった。
それまでベッドでまどろんでいたけれど、その眠気も一気に吹き飛んだようだ…振り払われないようにぎゅうと握り締めれば、あの、を繰り返して半泣きになる春歌。コンプレックスは思っている以上に根深いらしい。



「春歌……あんま、嫌がんなよ」
「で、でも…私の手は、あまり…その、可愛くないので…」


「俺は好きだぜ、お前の手。お前が俺のために考えてくれた音楽を、この手が実際にカタチにしてんだ…すっげぇものなんだよ、こいつは」


そう言って捉えた右手の甲へと接吻けるが…こいつを説得するにはまだ足りないらしい。赤くなってもごもごしながらも手を引っ込めようと足掻く。

頑なな彼女の態度に妙な対抗心が燃え上がる。もうこれはやるところまでやって、俺がどれだけお前の手を、ひいてはお前のことが好きなのか分からせてやる…!


両手を彼女の手首へと移動させて…指を、口へと含んだ。初めは人差し指。指を根元まで咥えて、涎を絡めた後に吸ったり甘噛みしたり。一つの指を丹念に舐め終わると、指と指の谷間を舌先でたどって次へ。合間には手の平や櫻貝のような爪にいくつものキスを落として…そうして順々に全ての指を愛撫してから、春歌の手を解放した。

お互い、随分と息が上がっている。





「好きじゃなきゃこんな変な事しねーよ…だから手も、お前の全部を、愛させろ。わかったか?」

「……は、はい…っ」


はっきりとした肯定に安堵の溜息をつく。くそ、春歌を見るのが恥ずかしい。なんか衝動的にやっちまったけど、指をしゃぶるとか…ドン引きされてもおかしくないよな。

それでも彼女の様子を探るためにちらりと見てみれば…真っ赤な顔で、俺の涎にまみれた手を口元にあててぼうっとしていた。半開きになった口からちらちら見える舌が変に色っぽくて、



「あー…わりい、春歌」
「翔くん?」

欲情してしまった。明日は二人とも早いから今日は何もせず眠るつもりだったのに…


「……すっげぇ、したい」







その後の春歌はすごく積極的で…いつもは終始恥ずかしそうにして布団で体を隠そうとばかりするのだが、今日はキスをしてきたりと大胆になっているようだ。今も、自ら手を繋いできて、その…枕によりかかって座る俺の上に、跨って、頑張ってくれている。片手は体を支えるために俺の腹に添えられているけれど、もう一方はしっかりと俺の手を握って離さない。

「しょ、ぉ、くん…んっ、あ…」

慣れないから仕方ないけれど動きは緩いもので、刺激としては物足りない。でもシーツを掴んでいた前回とは違って、一分の隙間が無いほどに密着した手にどきどきして…


情けないことに、かなり早く出してしまった。





指の間
(コンプレックスも含めて、お前の全部を愛したいんだよ!)




ゆり様へ
お待たせいたしました〜いちゃいちゃちゅっちゅな翔春ということで、当サイトにしては珍しく糖度が高いものになりましたwただ、キスがお手々限定というなんとも微妙なものにはなってしまいましたが…!お気に召していただけたら幸いです(´∀`;)
キスが足りない!ということでしたらお手数ですが拍手から一言お願いします…w

リクエスト、誠にありがとうございましたv
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