※オトヤンデレ。そして御曹司×使用人・時代物パロ。







外では雨が降っているのか、湿気が混じるものの空気がひんやりとして熱を帯びた肌には心地良い。
天からの滴を見ようと鉄格子が嵌った小さな窓へと顔を向けようとする。が、四つん這いになり尻だけ上げるという、まるで獣のような体勢の私に、背後から貫く覆いかぶさる御方に阻止されてしまった。頬に添えられた手に無理矢理に後ろを向かされて幾度も幾度も口を吸われ、視界を埋める紅玉のような髪に思わず目を細める。陽光に照らされれば輝く髪も小さな洋灯ひとつしかないこの蔵では暗く染まっているが、それまで薄暗い床ばかりを見ていた目には眩しかったのだ。

「まだ余裕が、っあるの…?」

だったらもっと乱暴にしてもいいよね、という物騒な言葉と共に繋がったまま強引に体がひっくり返された。擦れて赤くなった膝小僧が肩に付くほど折り曲げられる。そうして、根元までぴっちりと納めて子宮口を抉るように動きだした肉棒に、思わず呻き声が漏れた。体の下に敷かれた着物の殆どが、二人の体液で汚れてしまってぐっしょりと濡れている。

毎晩空が闇色に染まると、音也さまは私がいるこの蔵を訪れた。そして逃げ惑う私を捕まえて、冷たい床へと押し倒して、何刻もの間、この行為に耽るのだ。






「俺が二十歳になって、一人前の男になったら、結婚しようね」

まだ普通の女中としてお仕えしていた頃、真っ直ぐな目でそう告げられるのが辛かった。音也さまは着物問屋のご子息で、一方の私はお琴もダンスも何の取り柄も無い、只の女中で…幼い頃よりお仕えしてきたこの御方が立派な跡取りにお育ちあそばすことだけが、私の全てだった。音也さまが道を踏み外さないために、音也さまは由緒正しき御令嬢となさるべきです、と結婚の申し入れから何年も訥々と諭したが、受け入れられなかった。もう私に残された手段はお傍を離れることだけで、盆の里帰りで見合いをして結婚を決め…ご当主様にお暇を頂戴してご家族揃っての旅行の際に屋敷を出た。

しかし音也さまはそれすらも許してくださらなかった。

結納が迫ったある日、家路へと急いでいた夜道で誰かに首を絞められて失神し、気が付いたときにはあのお屋敷へと連れ戻されていた。世間的には誘拐、というものをされたのに警察沙汰になっていないのは書かされた遺書と一十木家の圧力のせいだ。今生では、もはや死人。籍も抹消されてしまった私を探してくれる人はいない。



それからはずうっとこの小さな蔵の中が、私の世界の全てだ。




「俺は君なんか好きじゃない」

「嫌いだよっ」

「大嫌いだから、閉じ込めて、やるんだ…っ」


雑言と共に水滴が頬に落ちてくる。酷い言葉を投げかける最中、音也様は必ず涙を流す。本当は私が泣きたいのに、辰砂の瞳が零す滴がとても綺麗で、はっきりと見ておきたいと思い涙は引っ込んでしまう。

ぼんやりとそれを見つめているうちに、ぶるりと大きく震えて精を吐き出した音也さまの体が脱力し、圧し掛かってきた。耳横の髪に鼻先が埋められるようになり、荒い息遣いが直接耳へとかかる。顔が見えなくなってしまったのが至極残念だ。



「君の言うとおりに別の女と結婚もしたんだから…だから、俺の傍にいてくれるよね」

雨音にかき消されて聞き逃してしまいそうな小さな小さな呟きに私も小さく頷く。私には他にいくところが無い。何より、この大きな子どものような方を置いていくのは忍びなく思えて、逞しくなった背に腕を回して、ぎゅうと抱きしめた。




赤い膝小僧
(嘘だよ本当は君が好き)




りお 様へ。
大変お待たせいたしました!狂愛か音也くんがドSで春歌を攻めまくるの、というリクエストを頂きまして、遠慮なく狂愛を書かせていただきました。好きですオトヤンデレ!\(^///^)/←
攻めまくるの、という点に関しては、相変わらずの濡れ場の薄さから少ししかお答えできませんでしたが…りお様のお気に召したら幸いです。

リクエスト、誠にありがとうございました!
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テーマ「人外ファンタジー」
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